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MIYAVI – 「Fire Bird」レビュー:世界を驚かせるサムライギタリスト、会心の一撃

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一体ギターという楽器、いやMIYAVIというアーティストはどこまで進化をするのだろうか。
前作「The Others」より1年4ヶ月振りに届けられた今作「Fire Bird」を聴いていると、そんな事を考えずにはいられない。

活動の拠点を日本からアメリカに移し、生活そのものから日本という狭い国から飛び出していったMIYAVI。「サムライギタリスト」として、ワールドツアーを成功させてきた。その独創的とも言えるスラップ奏法を全面に押し出したギタープレイは、多くのフォロワーを生んだが、誰も彼には追いつけなかった。
そして、今作を聴いていると、勿論スラップ奏法は健在なのだが、もっともっと前へと彼のギタープレイは進化している。

CD_ブックレット_表14

1曲目「Another World」、「This changes everything」という歌詞から始まるこの楽曲で鳴らされるギターで、すでに彼が「The Others」の地点にはいない事を強烈に実感させられる。ミュートの聴いたギターリフから一気にワーミーの効いた最高にカッコ良いギターフレーズが入ってくる。そして「Another world」という言葉が印象的に響く。
間奏でスラップ奏法が出てくるが、それ以上にやはりソロフレーズが目立つ。強靭なリズムとシンセの音と共に疾走する楽曲だ。

2曲目「Fire Bird」、アルバムタイトルにもなっているリード曲。アルペジオから始まるこの曲は、コード弾きを上手く使ったリフが入ると直後に強靭なリズムが印象的に鳴り響く。楽曲の中での緩急のつけ方が最高だ。トレモロの効いた間奏部でグッとくる。そして、やはりギターのソロフレーズがとにかく印象的に鳴り響く。これはロックなのか、ダンスミュージックなのか。僕はLCD Sound Systemなんかを思い出した。ポストパンクが勢いを取り戻した2000年代の音楽シーンをベースに、更にそれを進化させ2016年の音で鳴らされる音楽、そして彼にしか弾けないギター。
この個性は素晴らしいの一言だと思う。

続いて「Dim It feat. Bones」、まるで90年代のブリストルサウンドでも彷彿させるかのようなダウナーな雰囲気が楽曲全体に漂っている。ここまで、まだ3曲にも関わらず、凄い振れ幅だ。Bonesのボーカルが素晴らしいパフォーマンスを披露している。そして、楽曲後半一気にたたみ込んで来る。ドラムをきっかけに楽曲が開ける。その瞬間が最高だ!メロウなギターフレーズと相まって聴き入ってしまう。

4曲目「Raise Me Up」、言葉はいらない気がする。アルバムの中で一番ダンスミュージックをしている。人力テクノ。そんな楽曲。終始ギターのフレーズがヤヴァイ!バリヤヴァイ!MIYAVIのボーカルも突き刺さってくる。とにかくギターとリズムがカッコ良すぎる楽曲。世界標準、そんな事を考えずにはいられない。これが日本人の鳴らす音楽なのだろうか。彼の音楽はいよいよ国境なんてものを超えている。

5曲目「You Know It’s Love」、優しい鍵盤のフレーズに高音のボーカル。ダンサブルなリズム、印象的なギター。これ以上何が必要か。16で刻むハットに思わず体が揺れる。ダンスフロアで爆音で聴きたい。指使いやスクラッチノイズまで生々しく収録されていて、まるで目の前でギターを弾いているのを観ているかのような気分にさせられる。

続けて「Afraid To Be Cool」、MIYAVIのスラップ奏法が大好きな人は待ってました!な楽曲なのではないだろうか。
イントロからスラップが映える。MIYAVIのボーカルもアルバムの中で一番彼らしいと個人的に感じた。そして、この楽曲はダンスミュージックだと思った。ケミカルブラザーズがノエルギャラガーと共作したSetting Sunのようなダンスサウンドとロックサウンドとボーカルが完璧に一体化した絶妙なバランスの1曲。僕はこの楽曲をしばらくの間1曲リピート再生してしまった。最高に気持ち良いサウンド。

7曲目「She Don’t Know How To Dance」、ビートが心地良い。ドラムがロカビリーを彷彿とさせ、それに引っ張られるようなボーカル・ギターのノリが最高。この曲はテレキャスかな?ギターの乾いた音がカッコ良い。どの曲にも言える事なのだが、是非ともMIYAVI本人にこのアルバムで使用したギターやエフェクターを聞いてみたくなる。本当に多彩なギターサウンドを聴かせてくれる。

8曲目「Steal The Sun」、BPMの低い聴かせる楽曲。メロディが美しい。そして、土台を支えるドラムの重さが体に響く。女性コーラスも印象的。これまでは、インスト部分が特にフィーチャーされてきたが、この楽曲はメロディが全面に出ていて、オブリや間奏でギターが主張をする。という王道の展開。何故か70年代の空気を感じた。
ここまで聴いてきて思った事だが、MIYAVIの作る楽曲もギタープレイもアレンジも、その全てがタイムレスだ。1960年代~2010年代まで全ての音楽が彼の中に宿っていて、全てを消化し昇華し、出来上がっているような気がする。
彼の音楽の引き出し、懐の広さを感じずにはいられない。

9曲目「Long Nights」、この楽曲大好きです。ここまでも日本語の歌詞は登場してきたが、全体的に日本語の歌詞で歌われるこの楽曲はアルバムでも異質な存在だと思う。そして、コーラス部はシンガロングしてくれ!と言っているかのような女性ボーカルが印象的だ。音楽的にも、コーラス部で一気に開ける。コード進行も含め、開放感がある。そして、ワーミーの効いたギターが耳を幸せにしてくれる。
1度しか聴かずとも、楽曲が終わる頃にはシンガロング出来てしまう、そんな楽曲。ラスト子供の声で歌われるパートの裏で鳴らされるギターが秀逸!!

10曲目「Hallelujah」、何故だろう。「Hallelujah」というタイトルの楽曲には名曲が多い気がするのは僕だけだろうか。控えめなスラップギターとフレーズ、その上で歌われる「Hallelujah」という言葉、気持ち良い。そして、楽曲は段々と盛り上がってゆく。スラップもより印象的に、ボーカルやコーラスもより印象的に、リズムも跳ねてゆく。全ての楽器が一体感を持って楽曲を盛り上げてゆく。

総評だが、とにかくカッコ良いの一言に尽きると思う。こういう時、もっと語彙が欲しいと思う。でも、小難しい言葉で何かを言おうとするより、より純粋な気持ちなのだ。「とにかくカッコ良い!」そして、このアルバムは完全に世界標準だ。邦楽だとか洋楽だとか、そんな事は関係ない。これは音楽だ。ロックミュージックだ、ダンスミュージックだ、そしてギターミュージックだ。
「サムライギタリスト」MIYAVIだからこそ表現出来たアルバムだと思う。他の誰にも作れないアルバム。完全個性。これ以上の個性はない。どこをどう切り取っても凄まじくMIYAVIの音が鳴ってくる。

「The Others」は凄いアルバムだった。発売当時、僕は痺れた。なんて凄いアーティストなんだ。と。インディーズ時代から彼の音楽を聴いてきた自分としては、毎度毎度その進化に驚かされてきた。
しかし、今作はそんな次元にはない。別格に凄い。このアルバムを持って、これから世界中でライブが行われてゆくのだろう。と想像すると、それだけでドキドキする。より大きなステージへ。より多くの人々に届いて欲しい。
過去の偉大なギタリスト達と十二分に肩を並べるアルバムだと思うし、そんなギタリストに彼はすでになり始めていると思う。

ギターをやっている人は勿論、純粋に全音楽ファンに聴いてもらいたいと思う。
2016年、必聴盤がまた1枚増えたな。と感じた。これはこの先何十年も聴き続けられるべきアルバムだ。

是非、今すぐにCDショップへ走り手にとってもらいたい。

【MIYAVI】「Fire Bird」(アルバム『Fire Bird』より)

【MIYAVI】「Cocoon」(アルバム『Fire Bird』より)

【MIYAVI】「Steal The Sun」(アルバム『Fire Bird』より)


Kohei Murata

Kohei Murata編集長・ライター

投稿者の過去記事

バンド活動を通して、自分の音楽を世界に発信する事を志しながら、同時に仕事での独立を目指して様々な業種を経験する。バンドでは日本のみならず台湾でも活動を行い、台湾でのアルバム2枚のリリースや大型野外フェスティバルへの出演も果たす。
その後、様々な仕事を経験し2015年独立。
現在は音楽メディアOptimanotesの編集長兼ライターとして、記事の執筆をしている。

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