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[先行Review] 中田ヤスタカ – 「NANIMONO EP」

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このEPのレビューを書くに当たり、避けて通れないのが映画「何者」の存在だと思う。
それは、もちろん主題歌だから。という理由もあるし、米津玄師が書き上げた歌詞の世界が映画「何者」に絶妙にリンクしている。という理由もある。

でも、敢えて1楽曲としてのレビューをしたいと思った。それは、映画「何者」が例えなくとも、この楽曲に起こっている化学反応、楽曲そのものの素晴らしさ、歌詞の素晴らしさ、米津玄師の歌の素晴らしさが、恐ろしく表現されているからだ。

「NANIMONO EP」は映画「何者」のサウンドトラックと2枚組でリリースされる。そして、その2枚にはそれぞれ「NANIMONO EP」「何者 オリジナル・サウンドトラック」と名称が分かれている。これも、楽曲そのものとしてレビューしようと思った経緯だ。

「何者 オリジナル・サウンドトラック」のレビューは別途掲載しているレビューを読んでもらうとして、こちらでは「NANIMONO feat.米津玄師」という楽曲に触れていこうと思う。
まず、一聴した時に思ったのは、中田ヤスタカサウンドだ。という事。作詞・ボーカルを務めるのが米津玄師と前情報で知っていたので、少しサウンドクリエイションも変えてくるのかな?とイメージしていたのだが、見事に中田ヤスタカの音だった。米津玄師に寄った感じはしなかった。しかし、歌詞・ボーカルを務めた米津玄師の個性は全く潰れない。いや、むしろ今まで米津玄師が発表してきた楽曲では見えてこなかった米津玄師の新たな魅力が見事に引き出されているじゃないか。と感じた。

人の作った歌をシンガーとして歌う。彼が今までやってこなかった事だ。(定期的に行っているツイキャスなどでのカバーはあっても、自身が参加するオリジナル曲としては初である。)メロディを作ったのは勿論中田ヤスタカだ。しかし、ここで歌われるメロディは米津玄師そのものに聴こえる。勿論米津玄師の声の個性もある。しかし、それだけではない2人の化学反応が確実に起こっている。

聴く前までは、今まで中田ヤスタカのやってきた楽曲プロデュースを思い浮かべ、どんなものになるのか想像もつかなかった。しかし、蓋を開けてみたら、そこには単純に音楽として素晴らし過ぎる楽曲の姿があった。
ピアノのイントロで始まるこの楽曲は、いきなり壮大な雰囲気を醸し出している。そして、そこへ米津玄師の声が入ってきた瞬間に鳥肌が立った。ここまででもう虜である。
そして、中田ヤスタカ節のデジタルビートが入る。そこに違和感はない。あくまで自然な形で馴染んでいる。短く印象的な間奏を挟み、より中田ヤスタカサウンドが爆発してゆく。印象的なシンセサイザーの音色とフレーズ。そして、その上で歌われる米津玄師の苦悩の中に光を見出す歌詞。この楽曲は映画の主題歌だが、それ以上に楽曲としての素晴らしさを内包している。

2曲目以降に入っているミックスバージョンだが、とても印象的だったのは、どの楽曲も米津玄師の歌を大事にミックスしている。という事。
中田ヤスタカによるExtended Mixはより中田ヤスタカサウンドに。ベースの変化はそこまで見られないが、よりダンスミュージックに仕上がっており、こちらも素晴らしいと思った。楽曲中何度もフックになるような間奏が出てくる。

そして、3曲目以降のRemixだが、まず名を連ねているのがDanny L Harle, TeddyLoid, banvoxと凄まじく豪華である。そして、この3曲はRemixというよりはリメイクに近いと感じた。それぞれの個性が爆発した大胆なアレンジの再構築がなされている。しかし、ここでも米津玄師の歌はやはり生かされている。あくまでバージョン違い。という印象を受けた。
きっと、今までに数え切れない程のRemixワークをしてきた3人も米津玄師のここでの素晴らしい歌唱を無視出来なかったという事なのだろう。

中田ヤスタカのファンは勿論、心から楽しめると思う。そして、米津玄師のファンは彼の新たな一面に触れる事が出来て興奮するに違いない。元になっているのは1曲である。そして、Mix, Remixが合わせて4曲の5曲入り。しかし、1曲の楽曲とは思えないボリュームと満足感が得られるEPだ。

映画「何者」を観て気になった方は勿論だし、中田ヤスタカと米津玄師のファンには絶対に聴いてもらいたい楽曲だと思う。
一言追加しておこうと思うが、映画を観た方には、ただ楽曲を聴くよりもさらに心に響くと思う。それほど映画とのリンクも素晴らしいと思った。

きっと、映画を観終わった後、この楽曲を聴いたら中田ヤスタカと米津玄師があなたの背中を押してくれるに違いない。
だから、是非とも楽曲を聴いたら映画も観て欲しいと思う。映画を観たら楽曲を聴いて欲しいと思う。主題歌として、これ以上ない程良い仕事をしている。胸に迫るものが必ずあるはずだ。

「NANIMONO feat.米津玄師」、2016年下半期を代表する名曲の1曲である事は疑いようもない。


Kohei Murata

Kohei Murata編集長・ライター

投稿者の過去記事

バンド活動を通して、自分の音楽を世界に発信する事を志しながら、同時に仕事での独立を目指して様々な業種を経験する。バンドでは日本のみならず台湾でも活動を行い、台湾でのアルバム2枚のリリースや大型野外フェスティバルへの出演も果たす。
その後、様々な仕事を経験し2015年独立。
現在は音楽メディアOptimanotesの編集長兼ライターとして、記事の執筆をしている。

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