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CIVILIAN – 「eve(イヴ)」レビュー

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待望の、本当に「待望の」という言葉がぴったり来る、CIVILIAN名義でのメジャー1stフルアルバムが発売された。
タイトルは『eve(イヴ)』全14曲入りというボリュームのあるアルバムだ。

僕は、このアルバムのリリースを誰よりも楽しみにしていた一人だと思っている。CIVILIANとの出会いはもう随分前になるが、1リスナー・1ファンとして本当に楽しみに待っていたので、このリリースは本当に嬉しい。
収録曲が発表された時から、タイトルだけでどんな楽曲なのか想いを巡らせて待っていた。そして、ついにアルバムを聴く日が来た。正直、期待感が大きすぎて不安もあった。でも、アルバムを再生したらそんな不安は意味が無かったとすぐに気付かされる。
このアルバム『eve(イブ)』には、僕がCIVILIANに求めていた・魅了されていたものが存分に詰まっていた。アルバム14曲、本当にあっという間に聴き終わってしまい、気付けば無限ループに入っていた。

最初に断言しておこうと思う。
CIVILIANのメジャー1stフルアルバム『eve(イブ)』は、2017年の日本のロックシーンの最重要盤だ。間違いなく。

1曲目『eve』
アルバムの幕を上げるSE的な立ち位置の楽曲。ピアノの音が印象的な、初期Warpサウンドを彷彿とさせるようなアンビエントな生音エレクトロ。これから始まるアルバムの楽曲たちが内包している感情の奥を音にしたかのような無視出来ない素晴らしいSE。

2曲目『一般生命論』
いきなりコヤマヒデカズの新しい引き出しが開いている気がした。今までのCIVILIANにはなかったようなメロディメイクが楽曲を押し進める。
コヤマの「よーい スタート」という言葉から楽曲が開ける。CIVILIANのロックバンド的側面が前面に出たようなイントロがカッコ良い。ギターリフに持っていかれる。
歌われる言葉は、相変わらずの純度を持ち僕の心を突き刺してくる。そして、誰よりもコヤマの楽曲を理解しているであろう純市と有田のベースとドラムによって、3人のバンドアンサンブルが完成されている。
楽曲後半の、ギターがアルペジオになり、ドラムに深いリヴァーブがかかったパート、水中にいるような錯覚を覚えさせ、不思議とよりダイレクトに言葉が脳に入ってくる。

3曲目『残り物の羊』
なんとも意味深なタイトル。イントロからコード感が素晴らしい。ワーミーの効いたフレーズも良い。スリーピースならではのシンプルさ、前面に出す音の明確さが楽曲を引き立てる。
「孤独な羊」の主人公視点で描かれる、人間世界にも通じる焦燥やマイノリティ感、これぞコヤマヒデカズといった言葉が、面白い視点で描かれている。全編通して演奏が素晴らしい。余計なものが何もないとはこの事か。

4曲目『どうでもいい歌』
ディレイの効いたギターフレーズのイントロを抜け、出だし歌詞の通りに演奏が進んでいく、面白い手法。4つ打ちのドラムに明るめのコード進行、最初聴いた時少し驚いた。こういう事をやるイメージが無かったので。ただ、それも出だしのみで、「時代を変えたあの人~」からCIVILIAN節に変わってゆく。
サビはコヤマヒデカズのナノウ名義(ボーカロイド楽曲を発表する時の名前)の楽曲感があるな。と思った。CIVILIANというバンドが改名前のLyu:Lyu・ナノウを内包している事を強く意識させられた楽曲。途中のダブっぽい演奏パート好きです。

5曲目『愛 / 憎』
CIVILIANのメジャーデビューシングル曲。
文句なしにカッコ良い楽曲。スリーピースで攻めてくる楽曲。ドラマ「黒い十人の女」の主題歌でもあった楽曲。サビで歌われる歌詞がとても印象的だと思う。「馬鹿馬鹿しくてさ 涙が止まらない」「今 世界が嘘と明かされても 滅茶苦茶なステップ踏んで 笑うのさ」という言葉が突き刺さってくる。
途中途中入る有田のドラムフィルも秀逸だ。

6曲目『ハロ/ハワユ』
コヤマヒデカズがナノウ名義で発表したボーカロイド楽曲のバンド・カバー。ナノウ名義での代表曲でもあり、ファンにとっては堪らないカバーだと思う。
この楽曲については、シングル『顔』がリリースした時にレビューを書いているので、こちらを参考にしてもらいたい。

7曲目『赫色 -akairo-』
最新シングルにして、TVアニメ「将国のアルタイル」第二クールのオープニングテーマソング。
生を赫色に例え、書かれた歌詞がとても印象的で、その世界観を増幅させるような演奏が素晴らしい。出だしのシタールの音から異国情緒を一瞬感じさせたと思ったら、心地良い違和感のある音取りの、ギターのオクターブ奏法がさらに世界観を広げる。リズム隊はそんな世界観にロックな要素を足すかのように激しい。
間奏のシタールから「海の中で~」の歌詞から始まるパートがより異国情緒を醸し、一気にまたCIVILIANのロックな世界に引き戻される。一曲の中で様々な感情を揺さぶられるような秀逸な楽曲。

8曲目『言わなきゃいけない事』
コミュニケーションについて書かれた楽曲だと思う。僕の心の柔らかいところにそっと触れてくる歌詞。コヤマヒデカズの言葉は本当に力強い。そして、歌唱力や表現力もどんどん上がっていっていると感じさせられた。そっと目を閉じて耳に意識を集中して言葉と音を存分に吸収したくなる。自身の人生にこの楽曲の歌詞を何度も重ねて、胸をぎゅっと掴まれたような気がした。
何度聴いても名曲だと思った。

9曲目『生者ノ行進(Album Ver.)』
ここで来たか!と思わず嬉しくなった。ワンマンライブツアーで、観客のコーラスを録音していた、TVアニメ「ALL OUT!!」第二クールのオープニングテーマソング。
その観客達のコーラスを使用したアルバムバージョン。ライブでのコーラスの録音とコヤマヒデカズの言葉から始まる。その時のライブへ参加して、コーラスを全力で僕も歌ってきたので、目を瞑ると鮮明にその時の様子が蘇る。
ツアーに参加したファン達には堪らないバージョンだと思う。
楽曲自体のレビューとインタビューは過去記事を参考にして頂きたい。

10曲目『あなたのこと』
ちょっとCity Popsのような出だしに相変わらずの引き出しの多さを感じた。
歌詞がとても詰まっていて、言葉の情報量が多い。だからこそ、耳が自然と歌詞をずっと追って、結果的に言葉で楽曲に引き込まれる。そんな不思議な体験をした。
ラップっぽいパートもあり、新しいコヤマヒデカズの魅力が出ている。本当に良い声だな。と何度思った事か。
最後に歌われる「悲しみは 美しさは 何一つ 無駄じゃなかったんだ きっと」という言葉で涙腺が崩壊した。

11曲目『I’M HOME』
とても優しい。そして、とても悲しい。ロックに攻めるCIVILIANは勿論大好きなのだが、僕はコヤマヒデカズの描くこういった楽曲が堪らなく好きだ。
そして、純市・有田のリズム隊もこういった楽曲の演奏がとても上手い。三位一体。素晴らしい世界を描いてくれる。
CIVILIANのこういった楽曲を聴いていると、自然と涙が溢れてくる。追い打ちをかけるようなスライド・ギターの間奏がまた素晴らしい。

12曲目『顔』
篠原ともえがMVに出演した事でも話題になったシングル曲。
この楽曲も別でレビューを書いているので、こちらを参考にして頂きたい。

13曲目『明日もし晴れたら』
幻想的なイントロから始まる、本編最後の曲と言った方がいいのかな。とてもストーリーのある歌詞。僕はこの楽曲を聴いている時、終始鳥肌が止まらなかった。何故なのか分からないが、アルバム中一番歌詞が心に飛び込んできた。最後に相応しい感動的な1曲だ。優しいギターの音色、ベースとドラムはとても雰囲気があり、途中出てくるドラムロールは歌を歌っているようで最高だ。
そして、間奏。いきなりエモーショナルにギターが掻き鳴らされる。それでまた更に心を揺さぶられる。
泣かずには聴けない、音楽の力を見せつけられた気がした。

14曲目『メシア(2017.9.5 at Aobadai Studio)』
Lyu:Lyu時代の代表曲の1曲。コヤマヒデカズの弾き語りが収録されている。
この楽曲は発表された時から何度聴いてきたか分からない。ライブでも何度も聴いてきたし、音源も何度聴いたか分からない。
とても痛い楽曲だと思うのに、聴く事を止められない。コヤマヒデカズの真骨頂だと思う。歌詞・メロディ・演奏その全てが素晴らしい大名曲。ミュージシャンにもこの楽曲のファンが多い事で有名だ。
ここで収録されているバージョンは弾き語りなので、より言葉が前面に出てきていて、コヤマヒデカズの声と歌唱がまるで目の前で演奏されているように響いてくる。
もう、これ以上言う事はない大名曲だ。

アルバム全編14曲について書いてきた。
前半~中盤にかけ、ロックなCIVILIANを聴かせてくれた。そして、後半優しい演奏のCIVILIANを聴かせてくれた。
とにかく、今のCIVILIANを堪能出来る名盤の誕生だと思う。僕は、このアルバムを聴いて何度胸が痛くなっただろう。何度心を掴まれただろう。何度考えさせられただろう。そして、何度救われたんだろう。
「光」なんてシンプルな言葉で表現はしたくない。ただ、コヤマヒデカズの描く世界には、この世の無情・ネガティブさ・やりきれなさ・マイナスの感情、そういったものがこれでもかと詰め込まれている。安易な「光」なんてものはどこにも描かれていない。でも、何故だろう。そういったコヤマヒデカズの感情を受け取りリンクする事で、最終的に僕らは救われるのだ。
そんな奇跡を起こしてくれるのは、コヤマヒデカズの声や歌唱、そしてそのコヤマヒデカズの世界を一番近くで支えて完璧な演奏をしている純市・有田の力でもある。
CIVILIANというスリーピースバンドは、誰が変わっても成り立たない、そんなバランスで成り立っているバンドだと思う。

今、この原稿を書いている瞬間も僕の部屋ではアルバムが流れている。
原稿を書いているのに、僕の瞳からは涙が流れている。僕自身、CIVILIANというバンドに何度救われてきているのか。と考えさせられる。
心に刺さる芸術音楽。人の心を揺さぶる音楽。純粋過ぎる故の危うさを内包し、突き刺さる言葉をコヤマヒデカズは歌う。
こんなアーティストが2017年現在他にいるだろうか。いや、いない。唯一無二の存在。CIVILIANはそういうバンドだと思う。

このアルバムがリリースされ、ワンマンツアーも始まる。
僕は、今のこの時代、人々の心が不安定な日本だからこそ、CIVILIANはもっと聴かれるべきだし、沢山の人に届くべきだと思っている。
CIVILIANはやはり救済だった。

どうか、このアルバムがどこまでも広がってゆく事を心から願い文章を終えようと思う。


Kohei Murata

Kohei Murata編集長・ライター

投稿者の過去記事

バンド活動を通して、自分の音楽を世界に発信する事を志しながら、同時に仕事での独立を目指して様々な業種を経験する。バンドでは日本のみならず台湾でも活動を行い、台湾でのアルバム2枚のリリースや大型野外フェスティバルへの出演も果たす。
その後、様々な仕事を経験し2015年独立。
現在は音楽メディアOptimanotesの編集長兼ライターとして、記事の執筆をしている。

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