[Staff Recommend] King Gnu – 「Sympa」レビュー

今まさにとんでもない速度で躍進を続けるKing Gun。スタートから一年弱ながらも大型フェスの出演のメインステージを飾り、ワンマンライブのチケットは全て完売。その勢いはとどまるところを未だ知らず、まさに現代の音楽シーンという群れを先導する獣のよう。

そんな彼らの待望の二作目のアルバムとなる『Sympa』
フランス語でかっこいいを意味するその単語にふさわしい、破壊力抜群の最高の一枚。

あなたがその音源の入手したのは、CDを購入してか、はたまたダウンロードしてか、定かではないけれど、再生ボタンを押した瞬間からあなただけは日常とはどこか遠く、別の世界の住人になる。SympaⅠが始まる。どこかから無線越しに話しかけられる声がする、古いテレビの砂嵐のような音。助けて、と呼ぶ、見ず知らずの声。そうしてようやく一枚のアルバムに詰められたすべてが幕を切って落とされたように、溢れ出る。King Gunの『Sympa』満を持しての開幕である。

Slumberland
オープニングを飾るのは、アルバムのリード曲として発表された、アグレッシブなエッセンスが凝縮されたこの曲以外ありえない。飛び跳ねるようなそれでいて、どこかメロウな、飽和するようなメロディが印象的。思わず身体が揺れて動いてしまう、そんな感覚を味わえる。あなたも一緒に目が回るような気持ち良さを。

Flash!!!
この曲も以前にMVは公開されているから、聴いていた人も多いと思う。私もその一人。サイケデリックな映像と、思いの丈を叩きつけるような歌詞、メロディ、リズム。King Gunのらしさが詰まりに詰まっている。「いつだって思いのままに」やりたいことやるのは誰がなんと言おうと圧倒的にかっこいい、爆風で背中を押してくれるような、そんな無茶苦茶が2分半に圧縮されているのだから驚きだ。

Sorrows
悲しみ, 悲哀, 悲痛, 悲嘆, 悲しみのもと, 不幸, 不幸せ, 難儀…。そんなネガティブを名前に掲げた楽曲。名前と相反してメロディは明るく、テンポもいい。サビではコーラスが入るからか一層曲が厚くなる。蠱惑的になる。現実の苦しみを無くそうするのではなく、それすら呑み下して不敵に笑えるそんな楽曲。

Hitman
間にSympaⅡを挟み、雰囲気はどこかゆるりと解けたような、張り詰めていた糸が弛んだような、そんな感覚になる。雲のかかった灰色の空が次第に明るくなっていくような、曲の終わりには真っ青が目の裏に浮かぶような、爽快で、さっぱりとした後味のよさ。

Don’t Stop the Clocks
繰り返しの音がすごくハマっている。続く「O」の母音が気持ち良い。それを引き立てるのがなんといってもボーカル井口の声だろう。優しく空気を含ます歌い方を引き立てる、後ろで指を鳴らすような音も印象的。一曲前とは、うって変わって、ほの暗い中に真っ白な雪が舞うなか、一本灯すロウソクみたいな、そんな暖かな感じを持つ楽曲。

It’s a small world
最新の曲なのだから、聴いたことなんてあるはずもないのに、なぜか、どこか懐かしさを感じたのは私だけなのだろうか。MVが公開されたときから聴いていたが、他の曲と比べて派手な部分があるわけではないし、映像も今までのサイケデリックさはない。それでもずっと聴いていたくなる中毒性がある。どうしてだろうか。いままで忘れていたなにか、おもちゃ箱をひっくり返したみたいな、懐かしさと切なさがバリバリで、何度だって繰り返してしまう。このアルバム一番の中毒性の高さを私は覚えている。この後にSympaⅢが流れる。

Prayer X
King Gnuとしては初のアニメタイアップ曲。かの名作、BANANA FISHのために書下ろされたこの楽曲は、MVも公開され、そのダークで引き込まれる世界観に魅せられ、白と黒と黄色で作られた映像に釘付けになったことをよく覚えている。聴いていると、揺さぶられる、それはただ良い感情だけでは、必ずしもないけれど、すごく自分の中の何かが反応する。ぐちゃぐちゃになる。それでも、だからこそ、聴きたくなる。そんな不思議な魅力をもった『Prayer X』、祈り、祈祷そんな意味をもった単語を冠する、叙情的な一曲。

Bedtown
軋むブレーキのような音から始まる。スイッチが切り替わる。ここで一転して、日常が感じられる、そんなちょうどよさのあるそんな曲。それでいて抜群にかっこよい。すぐそこにある生活の中ですら圧倒的に魅力的にしてしまうのが、彼らの音楽の魅力だと痛感する。

The hole
ラストに据えられたのは、下へ下へ落ち込んでいくような、自分に染み込んでくるような、そんなメロディラインをたたえた楽曲。揺らぐ、靡く、優しく寄り添ってくれるような、それでいて、刺激的で、攻撃的、そんなこの世界がまだまだ続いて欲しい、終わってほしくない、そんな風に思わせるには十分な、そんな役目を帯びた曲。名前が穴を意味するThe hole
なのも、なんとなく象徴的だ。

始まりと同じように、でもどこか鮮明な電子の音が流れる。このアルバムでは一貫してこれらの音が、間をつないでいた。それもSympaⅣで終わり。長いようで短かったこの物語も、これで幕を降ろす。これにて終幕。幕切れ。事切れ。もはや何も語られない。言葉はない。音は次第に空気に混ざり、最後警報の中に消えていく。

さて、これらの楽曲がどうライブで披露されるのか今から楽しみでしかたがない。聴くものを圧倒し、次々と魅了していくKing Gun。そんな彼らから目が離せない一年になることだろう。

King Gnu – Slumberland

King Gnu – Flash!!!

King Gnu – Prayer X

King Gnu – It’s a small world


尾方里菜

尾方里菜デザイナー・ライター

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表現することが好きな、どこにでもいる普通の人。思い立ったらなんでもやりたい。我慢できない性質(たち)。
現在はデザイナーとして修行しつつ、このメディアでライターも経験させていただいております。
趣味は写真を撮ることと絵を描くこと。好きな言葉は「鳩だって死ぬところを見るまで不死身だ」よろしくどうぞ。

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