無国籍オーガニックサウンド、シンガーソングライター行田雄介「妄想のしじま」リリースインタビュー

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3月12日に約6年ぶりのソロでのシングルリリース。
行田雄介の「妄想のしじま」から見える原風景を感じながら、4月、5月とリリースが続いていくシンガーソングライター行田雄介のサスティナブルな活動についてお伺いしました。

インタビューはネイチャーブリスレーベルのギャラリーをお借りし、その日は3月初旬でしたが気温が20度近くも上がり、セッティングの間にギターを弾きながら待っている様子もとても心地よく春の陽気に包まれて進行していったのが印象的でした。

ミュージックビデオ「妄想のしじま」

– session members
vo,gt 行田雄介
bass tatsu horn 森俊也
bongos 小林ムツミ
drums 荒井康太
chorus はせがわかおり
chorus 松本敏将
– mix & mastering
内田音響研究所
– video production
杉原悠太 村のバザール

――本日はよろしくお願いいたします。

――まずはリリースおめでとうございます。
6年ぶりのソロでのリリースとなりましたが、今回この作品を作ろうとおもったきっかけはなんだったのでしょうか?

行田:前作の「mother shape」をリリースした後、2016年〜2019年に元JARIBU AFROBEAT ARKESTRAのYuichiro Kubo a.k.a. K-BOSSと、ドラマーの荒井康太とthe sunというバンドを3年ほどやっていて、(現在のベーシストはtatsu(LA-PPISCH/Ganga Zumba/Joy Heihts …etc))地方にツアーに行ったりしてガッツリバンドやっていた時期があって楽しかったんですけど、バンドっていろんな人の意思が介在するので一つの作品を作るときにバランス感覚が必要で、必ずしも自分が作りたいものやそのとき気分がのるものができるわけでないので、もっと自分のピュアなものも見てみたいなという気持ちになってきて、突然思い立って2020年の1月の6日からレコーディングを始めました。

リズムが面白いものが良いなと思って、以前に一緒に曲づくりをした事のあるパーカッショニストのムーピー(小林ムツミ(Mumbia Y Sus Candelosos/民謡クルセイダーズ))を誘って、キャベツ畑の真ん中にある整体所を兼ねた変わった録音スタジオ「内田音響研究所」で、大体ひと月に一曲のペースで、約一年をかけて7曲録りました。
ちょうど一年前、2020年の3 月に完成したのが「妄想のしじま」という楽曲でした。

「妄想のしじま」という場所

――3月にとても縁のある「妄想のしじま」にはどんな意味がありますか。

行田:僕が曲を作るとき最初は鼻歌まじりの言語化しづらい雰囲気だけが曲と同時に生まれて、最後にコトバを付けます。そうすると一気に音楽の様相が変わって一気に音楽に色づくんですよ。あ!こんなものが産まれた!というのを俯瞰して見てタイトルを付けます。
だから最初から何か意味があってつけたものではなくて、
夢占いするみたいに、自分から自然に出てきた言葉を手繰って、潜在意識でこれは何を表現したかったのかを考えて浮かんだ言葉が「妄想のしじま」でした。
それに解説つけるとすれば、
「妄想」については人間は皆、主観的に生きている気がしていて、一つの対象に対して受け取る印象は人それぞれ違うわけで、でも人それぞれ自分のそうだと思うもの受け取って思い込んでいる。それがもう全て妄想なのではないかなと思っていて、同じ地球で起っている出来事をみんなそれぞれ好きなように受け取っていること自体が妄想であると捉えました。

でもそれを一つ俯瞰してみている目線もあると思っていて、自分の思っていることを、何故そう思ったのかという一つ上の目線で俯瞰的に捉えてみることのできる鎮まりかえった場所、それが僕の思う「しじま」という場所。
妄想(個人個人が好き勝手に物事を捉える)の集まる場所より少し離れた鎮まりかえった場所のことを「妄想のしじま」それを歌っています。

――「妄想のしじま」の歌詞の世界観は聴く人にどんな印象を与えたいですか?
行田:基本的には楽しいものであって欲しいです。聴いた人にとって面白い想像を膨らませるような。

行田雄介の歌詞への言葉えらび

――歌詞として選ぶ言葉には言葉意味の他に質感や韻の踏み方も大事にされているような気がしています。

行田:そうですね、言葉の触り心地。気持ちいい感じで選んでいます。
クラシックな手法だけど、体が反応するやり方で自然とはめることが多いです。
歌いながら歌詞はつけていきますが完成後に推敲をかなりします。
作ったものをすぐ出すというのは、自分の中では気をつけなきゃなと思っているのでバランスの良い部分を探って作り上げていきます。

――作品が完成してご自身が全てを出し切ったときに感じる自分自身の変化はありますか?

行田:その世界に染まっている自分がいてその文脈を引き継いで、次の文脈に繋がっていくんですよ。「妄想のしじま」はシングルとして切り出されたものではあるけれど、アルバムとして全7曲が揃ったものはその時の自分に一貫しているものがあります。
アルバムは同じコンセプトで時系列に並んでいるものではないです。

――5月にリリースされるアルバムの曲順はどういう意図で並べていますか?

行田:僕の中では7曲を作り終えたときに、終末感というか、何か地球規模で変化が起きようとしていると日々感じることが増えていて、
それを感じさせるキャラクターの曲が「ポスト世界」(アルバム収録)だと思っています。“次の”という意味のポストと人によって受け取り方が違うの“世界”。
曲のなかで、地球の中と新しく地球の外にできた惑星の“ポスト世界”の両方の視点で歌っていて。少しS Fチックな世界観なのだけど、そういう変化を捉えた世界観がアルバムイメージとしてあって。そのキャラクター曲をもとにエディットしたら完成したアルバムの曲順になりました。

「妄想のしじま」は曲の始まりから明るくて1曲目を飾る運命を背負って生まれてきた曲のようでしたね。

小林ムツミさんとの多重録音、内田音響研究所でのやりとり

ーー今回の作品をつくる上で、演奏やサウンド面の工夫はありましたか?

行田:ムーピー(小林ムツミ)のパーカッションが作品に独特の印象を与えてくれていると思います。ハイテンションのままずっと低空飛行しているような、ねじが外れているんだけど安心感に包まれてるような、そんな少し変な楽しさがあります。ムーピーの音色は最高です。スコーンって抜けるような透明感とか、無邪気な可愛さやひょうきんさがあって、「妄想のしじま」はその雰囲気がダイレクトにでている気がします。一曲に一日かけて、二人で楽しく多重録音していきました。彼女はアレンジのアイデアもたくさん提供してくれました。

録音の面では、内田音響研究所のうっちーさんのサウンドメイクが素晴らしくて、太鼓もギターも大体1、2本のマイクでさりげない感じで録るんですが、音の本質を捉えているというか、”無駄なものは追わずに欲しいものだけ追う”みたいな姿勢があって、それが最終的なサウンドに反映されてる気がします。それと、休憩中に淹れてくれるコーヒーが本当に美味しくて癒されました。

今回の作品は、この二人がいないと存在しなかったと思います。
最後の曲を録り終えた時は、卒業感がありました。感謝してます。

みなみりょうへい氏との出会い

――今回の3度のリリースのみなみりょうへい(http://ryohei-minami.com)さんによるジャケットのアートワークは、曲を聴いたイメージで作ってもらったのですか、それともご自身のイメージを細かくご説明されたのでしょうか。

行田:聴いてもらって彼の「妄想のしじま」を表現してもらいました。
みなみりょうへいくんについては話したいことがいっぱいあります。
彼はラッパーでもあって、The sunというバンドをやっているときに一緒に宴会しながら曲を作ったことから仲良くなって、すごい面白いラッパーというか言葉を操るかっこいい人で、彼の家に行ったときにアトリエにたくさんの絵が並べてあって、
それは何なのかよくわからないけど腹を抱えて笑い転げてしまう大きなエネルギーを持った作品で、いつかソロの作品を作るときに、僕のアートワークをやってくれないかというのをお願いして念願叶ったということです。

彼は今、生田にある岡本太郎美術館の太郎展で、そこでインスタレーションの展示をしています。
絵描きでもあり、美術家でもあり、ラッパーでもあり、トラックも作ります。
自分の頭の中をあらゆるもので表現できるのがみなみりょうへいくんです。

――今回の作品で伝わると嬉しいなということは何でしょうか。

行田:軽く明るく生きることが最高だ!ということが伝われば良いかな。皆さんの後押しをする作品になると良いなと思っています。

――――普段曲を作るときに根底として自分がテーマにしていることはありますか?

行田:その時々で毎回変わります。その時の自分が置かれている状況や、
その時考えていることがダイレクトに出ますね。
これについて歌わなければならないとか、歌うべきだっていう風ではなくて良いと思っています。日々の中で自然に生まれたもの、音の気持ち良さやギターのフレーズでいいものが相まったときに曲になるので単純にその時楽しいと感じるものから制作するというのがテーマかな。。。

音楽家行田雄介と植木屋行田雄介

――そうすると日々の生き方がとても重要になってくると思うのですが、どんな感じで一日を過ごされたり、心がけたりされていますか?

行田:まず念頭にあるのは、“嫌なことをしない、選択肢にいれない”ということです。
“好きなこと、やりたいこと、得意なこと”をやるようにしていています。

1日の過ごし方は、朝5時ごろ起きて、瞑想してお湯を沸かしてコーヒーを淹れます。

その後、お弁当を作って仕事に行きます。仕事は農薬を使わない手入れ専門の植木屋「おひさまえん」を自営しています。

――最近見つけた素敵な気になる植物はありますか?

行田:最近でいうと、去年大田区の古いお屋敷にあった楠の根本に蕗の薹がいっぱいあって、そこの手入れで取り除かれてしまったフキを一株持って帰って植えたら今年、薄黄色の花を咲かせていた。
春は新しい生命の誕生があって、楽しいことが多いですね。
ほとんど外にいることが多いので季節を感じられています。

――その季節感は音楽も影響していますか?

行田:確実にあると思います。作る季節によっても曲の感じは変わります。
言葉を扱うのに季節は大事ですね。
最近娘と、小倉百人一首やるのですが、全て季節のことを歌っていて自然の出来事が日々の大きな出来事としてあった時代だったのだろうと感じます。

言葉ってすごく面白くて、犬とか猫とかって感情あると思いますか?
虫は?学術的には哺乳類には感情があると言われています。
虫とか、木とか、土とか間違いなく言葉という概念はないわけで、犬や猫は、感情はあるけれど言葉はなくて、人の感情は言葉に変換できて、言葉にしたら今度は物質にもなるわけで、よりイメージを現実にできる言葉を持ったのが人間だなと思っている。

――言葉の持つ影響力についてお話いただきましたが、マイナスに働く言葉を歌詞に使わないように気にかけていたりしますか?

行田:汚い言葉や悪い言葉を思い浮かべることは自分にとってコントロールできないけれど、それを選択するかどうかは“しじま”という場所でコントロールできると思っています。
基本的には好きな言葉しか歌詞には使っていません。
ロジカルに言葉を選んではないですね。なので嘘もないです。
聴き手にどう受け取られても問題ないです。生き方自体そういうスタンスでありたいと思っています。

――音楽人生において、「どう受け取られても問題ない」というスタンスは変わってないですか?
行田:いいえ、今が最も良いスタンスにたどり着けていると思っています。
昔はもっと苦しかったり、絶対できないことを願ったり、自虐的だったし、周りの人も傷つけたと思います。

吹奏楽からロックへ

――一番最初に聴いて影響受けた音楽、音楽を始めたきっかけは何でしたか?

行田:小学生1年生の時に、「海は広いな」を先生の前で一人ずつ歌うことがあって、僕はあまりに気持ち良すぎて、三回位歌い続けてしまった時があって、歌うことに対する気持ち良さを知った瞬間でした。それから小4の時には吹奏楽に入りました。父親が広島のブラスバンドの指揮者をやっていて音楽好きだったことで自身が吹奏楽に触れることを喜んでいたし、吹奏楽の先生がかっこいい先生で、なぜか指揮をするたびにスーツの同じ箇所に穴が開いて、先生は、気が溜まる場所が穴が開くところだと言っていました。そんな先生との出会いも音楽を好きになるきっかけかもしれません。吹奏楽をやっていた3年間はすごく大きく影響していて、中学でも吹奏楽に入って欲しいと周りから期待されていながらも、バスケ部に入りました。

そこでロックと出会うわけですよ。
バスケ部で友達とうまくいかなくてとにかく孤独で、兄がパンクバンドやっているのを聴いていたり、ラフィンノーズ、コブラ、ブルーハーツや亡くなった尾崎豊を聴く機会が増えて、「花子さん」というオリジナル曲とブルーハーツのコピー半々のパンクバンドをはじめました。
中三の時の卒業ライブで初めてライブしました。
広島はパンクバンドが多いんですよ。

――小さい頃から音楽が身近にあった行田さんですが、音楽で食べて行こうみたいな気持ちはありましたか?

行田:バンドメンバーから、“俺らこれで食っていくじゃろ?”と言われたことがきっかけで、それまでも自分にとって音楽は身近なものだったけど、その一言で、そうかと意識したと思います。

音楽はただ単純にやめられない
――音楽やってきて一番辛かったことは何ですか?

行田:音楽は単純に楽しいもの。純粋に楽しいもの、ただそれを自分がつまらなくさせているだけ。
いろんなものをこびりつかせて。音楽に執着しすぎた時が辛かったですね。

――音楽があって当たり前だけど、辛い時期も乗り越えて今まで続けられたのはなぜですか?
行田:ただ単にやめられないだけなんですよね。気がついたらやっているものでしたね。

――音楽の魅力とは?
行田:音楽は水みたいなもので、心地よいもの。
強制力があるものではないけど、音楽は絶対になくならないものだと思うし、
そんな好きで、楽しい音楽を方法として、
何かの価値を生み出して、自分は存在していいものだという認識になれる魅力があります。

――今後やりたいこと、イメージしているものはありますか?
行田:今は、リリースパーティ。アンコールにやる曲を作りながら、想像して感動して泣けてきたりしてます。
今後は、またフレッシュな人と出会って、曲を作って、ライブもやり続けたい。
本当に心地いいものを作っていきたいです。

直感・仲間・楽しさ
――今のご自身を形成する3つのワードは何ですか?
行田:直感、仲間、楽しさ です。
直感ってもっと重要視されていいと思う。何でもそれを理由にしたい。
僕一人では何も起こらないし、一人では何もできなかったと思うから、自分の音楽にに呼応して一緒にいてくれている仲間は尊いです。

――リスナーの皆さんへ
行田:僕の作品が、皆さんの明るく楽しい毎日を後押ししてくれるような作品になると嬉しいです。ぜひ聴き倒してください。

インタビュー後に前作アルバム「mother shape」に収録の”白くて四角い部屋”を演奏して頂きました。
ネイチャーブリスレーベルのYouTubeチャンネルで観ることができます。

【行田雄介リリース情報】
3月12日 シングル「妄想のしじま」リリース

サブスク視聴リンク▶︎https://nex-tone.link/97260

4月9日 シングル「合わせて2にしかなっていない」リリース

5月7日 先の2曲を収録した全7曲のアルバム「Other Ape」をリリース

【行田雄介(yusuke yukuta)プロフィール】
オフィシャル ウェブサイト: http://yusukeyukuta.zombie.jp/
オフィシャルtwitter : https://twitter.com/YusukeYukuta
オフィシャルInstagram : https://www.instagram.com/yusukeyukuta/

シンガーソングライター。農薬を使わない手入れ専門の植木屋さん「おひさまえん」を自営。広島県出身。
2010年より、日本を代表するアフロビートバンド「JariBu Afrobeat Arkestra」にギタリストとして加入。
2015年、ソロ活動開始。同年、NATURE BLISS より、1st Solo Album「mother shape」をリリース。
欧州はドイツ、オランダ、イタリアの音楽誌やウェブジンで紹介され、南米はアルゼンチン、チリのラジオ番
組、音楽誌等で紹介されるなど国外で高い評価を得る。2016年より、アフリカや南米音楽などのリズム
と日本語ポップス、ロックを融合させたスリーピースバンドt h e s u n<行田雄介、荒井康太
(SUNDRUM/CANTO/晴れツ)、tatsu(LA-PPISCH/GangaZumba/JoyHeights>を結成。三曲入
ミニアルバム「the three mountains」(2016)、七曲入フルアルバム「太陽と3つの山」(2018)の二
作品をリリース。2020年、ゲストにパーカッショニストの小林ムツミ(民謡クルセイダーズ/MUMBIA Y
SUS CANDELOSOS)を迎え、新作を録音。2021年リリース予定。自然好き、植物好きが高じて、
農薬を使わない手入れ専門の植木屋さん「おひさまえん」を自営。本と音楽と自然を愛している。

【過去作品】

「mother shape」
BUY▶︎https://naturebliss.bandcamp.com/album/mother-shape-krg-5

Spotify:https://open.spotify.com/album/46fpVUEuPfDyfrJbdLMdX8?si=ry31AyEuSE2Aum3BswZZOg

★インタビュー会場としてご協力いただきました、NATURE BLISSレーベルの店舗the ETHNORTH GALLERYさんありがとうございました。台東区の谷中銀座のそばにある素敵な手仕事のお店。ぜひ行ってみてください。

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投稿者の過去記事

愛媛県出身、東京在住。電子音楽家。コラージュ音楽家。幼少より録音機器や楽器にふれ、独自の音創りをはじめる。容姿と相対する硬派なサウンドと鮮烈なヴィジュアルイメージで注目を集め、2013年待望の世界デビュー盤『Tough and Tender』(邂逅)をリリースし話題をさらった。
2015年に2nd アルバム『Masquerade』(邂逅)をリリース。
また、鈴木光司原作・福田陽平監督のホラー映画『アイズ』、田中佑和監督長編映画『青春群青色の夏』、ヤマシタマサ監督『東京ノワール』など多岐にわたる映画の劇伴や、広告音楽、サウンドロゴなどの作編曲も手掛けている。
2018年は、5月より3ヶ月間デジタル配信での連続リリースを行い、ラップトップの他、モジュラー、コンパクトエフェクターなどのアナログ機材を使用したライブパフォーマンスが話題。

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