シングル曲「アンビリーバーズ」から始まる、まるで宝箱を開けたかのような珠曲の14曲。
捨て曲なんて言葉を使うのも嫌になるほど、素晴らしい曲が次々と再生される。こんなアルバムに出会えて僕は本当に幸せだと思う。
1stアルバム「diorama」2ndアルバム「YANKEE」も、それはそれは素晴らしかった。僕のiTunesライブラリの再生回数を見たら、ほとんどトップは彼の曲で埋まる程だ。
それほど素晴らしいアルバムだった。しかし、今回の「Bremen」はそんなレベル感ではない。
元々彼の音楽には人を引き込む恐ろしいほど圧倒的な個性が存在する。それは、歌詞にも、音にもアレンジにも、コード進行にも、その全てに。
だからこそ、一度聞いてもすぐに二度目の再生をしてしまうのだ。これほどの圧倒的個性は邦楽・洋楽合わせても数年に一度出会えるか出会えないかの才能だと思う。
そして、今回の「Bremen」である。1st,2ndアルバムに比べると一見この個性が隠れている。
最前に個性を押し出していないように感じる楽曲が多い。これが意図的ならば、彼の才能は本当に計り知れないと思う。
個性というものは、フィットする人には恐ろしくフィットするが、その個性が苦手な人には苦手なものだ。
しかし、今回の「Bremen」はどうだろうか。恐らく誰が聴いても素晴らしすぎる楽曲が詰まったアルバムなのだ。
耳障りが良く、程よくPOPで、でも歌詞や音作りは実に精密に音楽ファンを満足させる作りをしている。
そして、前述した彼の個性である。気づく人は一度目で気づくだろうが、しっかりと全ての楽曲に彼の圧倒的個性が内包されている。
例えば「メトロノーム」という人気曲の中にさり気なく散りばめられた「D#dim」や最後の「Cadd9」など、コードを紐解くだけでも、彼の個性が浮き彫りになる。
そして、そんな個性をあくまで自然に心地よく鳴らせるアレンジ力の高さ、何もケチをつける箇所がないのだ。
きっと、これから米津玄師を知る人は沢山いると思うのだが、今回の「Bremen」は彼を知る第一歩としてこれ以上ない最高のアルバムだと思っている。