今回は僕の友人の話。
なぜか僕の周りにはミュージシャンの友人が多い。ライブに誘ってもらったり、新譜を聞かせてもらったり。友人でありながら、ジャンルは違えど同じクリエイターとしてとても良い刺激を貰っている。
そんな友人の一人にAKLOというラッパーがいる。母親は日本人、父親はメキシコ人のハーフメキシカンで、スパニッシュ、英語、日本語の三ヶ国語を自在に操るラッパーだ。おまけに男前で、とても優しい。男の自分から見ても惚れてしまいそうな素晴らしい男なのだ。普段は共通の趣味であるガジェットや海外ドラマの話で盛り上がる。先日も自分がパーソナリティーを務めるblock.fm「嗚呼!花の帰宅部」というネットフリックスがスポンサーのラジオ番組で、アポなし電話にも関わらず快く出演してくれて「クラブ・デ・クエルボス」というメキシコ製作のサッカーチームの物語のドラマを紹介してくれた。
さて、話はちょっと脱線してしまったが、そんなAKLOがJAY’EDと組んで、9月6日に「Sorry…come back later」というEP(ミニアルバム)をリリースしたのだが、そのアートワークが個人的にはちょっとした事件となった。手掛けたのは大瀧詠一さんのアートワークでも知られる巨匠、永井博さん。あの永井博がヒップホップのジャケットをデザインした! しかもそれが友人AKLOのだって、これは事件でしょ。裏話では、永井さんはレコードコレクターでもあるらしく、CDのほかにアナログレコードもリリースするならと快諾してくれたらしい。お金ではない部分にその理由があるあたり、さすが巨匠。話はこれだけでは終わらない、そのジャケットになんと、アップルの Macbookが描かれている。永井博がアップルプロダクトを描く! これは、アップルフリークとしては絶対に抑えておかなければならない。最近では、CDをモノとして買うことはめったになかったのだけど、久しぶりにモノとしてのCDに物欲が湧いてしまった。その勢いでアルバムジャケットが描かれたTシャツもゲット…。
アルバムの内容もすごくいい。もちろんAKLO、JAY’EDともソロで活動するミュージシャンであるが、その相性がすごくいい。元々友人である二人が、交友関係の延長で楽曲制作を始め、本当にオーガニックな形で作り上げたアルバムであることがよくわかる。レコード会社が無理やり結びつけたユニットではこうはいかなかっただろう。
シングルカットもされた「Different Man」のミュージックビデオ。この曲はテレ東のドラマ「デッドストック-未知への挑戦-」のオープニングテーマにもなっている曲で、スムースなR&Bビートがとても気持ちがいい。ビデオの内容は完全に90s。90sといってもウータンクランやNASなどに代表される90年代中盤以降のハードコアなHIPHOPではなく、まだその前夜、ダンスブームが起きた90年代前半の脱力感がいい。独特のファッションや、部屋中に散りばめられたマニアックなアイテム、二人が踊るダンスの振りからVHS調のルックまで、細かいディテールから滲み出る時代感に拘っているのがいい。AKLO、JAY’EDのキャラクターと監督であるSITE氏の才能がとても良いグルーブを生んでいる。
今回のEPは全編AKLOがリリックを担当しているという。おしゃれなサウンドとして聴くのはもちろんだが、その歌詞はちょっと元気がない時の処方箋ソングとして聴くのにもバッチリだ。とてもよいアルバムなので沢山の人に聞いてもらいたいなぁ。