My Hair is Bad – 「boys」レビュー

僕が彼らの存在を知ったのは、実は結構最近の事だ。
デビュー当時から名前はちょこちょこ見かけるものの、それだけの存在だった。日々に忙殺され、その音楽を聴く機会はなく時間が過ぎていた。
そんなこんなしているうちに、彼らの名前を目にする頻度は飛躍的に上がってゆき、もはや僕には無視出来ない存在になった。「武道館公演決定!」「大阪城ホール、横浜アリーナ完売!」なんてニュースも届いてきて、もうこれは聴いておかなきゃ駄目なやつ。と思って、最初に聴いたのが「戦争を知らない大人たち」だった。
最初に聴いたのがこの曲で良かったのか悪かったのか、椎木のその独特な歌い回し、歌詞の構成、使う言葉、メロディ、そして何よりエモーションって言葉を圧縮して詰め込んだような楽曲の熱量。それに僕は完全に当てられた。
それからは早かった気がする。これは全曲聴きたいと、リリースされている音源を片っ端から聴き漁り、世間で「マイヘア=エモ」と言われてる理由も自分の肌で感じた。彼ら以上にエモーショナルな存在なんて、確かになかなかいないと思った。

そんな彼らが1年7ヶ月振りに4枚目のフルアルバムを出すという事で、どうしてもレビューが書きたいと思った。ただの感想文になるかもしれない。でも、音楽メディアに携わる者として、彼らの新譜に触れないわけにはいかないと思った。
さて、前置きが長くなってしまったが、そんなMy Hair is Badの4枚目のアルバム「boys」の全曲レビューを行ってゆきたい。

1曲目「君が海」。
アルバムのスタートとしては、あまりに完璧過ぎる勢いと胸を掴む音や言葉が詰め込まれた、これぞマイヘア、これぞ椎木と思える楽曲。
「この夏が最後になるなら その横顔だけでいいから ずっと忘れない」という歌い出しで、すでに情景があり過ぎて胸がギュッとなる。
サビでリズムが重くなると、より楽曲の説得力が増して飛んでくる。もう、この時点でこのアルバムが素晴らしいものである事を感じ取れる。
素晴らしい1曲目

2曲目「青」。
歪んだギターのアルペジオ、なんだろうな。これがクリーントーンだったらきっと雰囲気がだいぶ違うんだと思う。途中からドラムがエイトビートで入ってくると一気に楽曲が加速し始めて世界が開ける感じがする。
彼らは最小限の楽器で、パートパートのアレンジやリズムを変えるのがとても上手い。途中アコギになるパートからまた歪みギターに戻る時にドラムがいなかったり、本当に様々なバリエーションで楽曲をカラフルにする。
「青」って色で梅雨から青春まで、様々な事を歌っているのがよく分かる。

3曲目「浮気のとなりで」。
歌詞を追うと、凄く生々しい歌なはずなのに、とても爽やかに歌われるとなんというか不思議な気持ちになる。自分が相手の浮気相手になっている。というシチュエーションで描かれるこの曲。どこか相手を信じたいという気持ちが内包されていて、そんな葛藤が浮き彫りになってくる。
爽やかなコード進行やストレートなアレンジがその葛藤を重たくし過ぎずポップソングとして成り立たせているのが絶妙なバランスだな。なんて思った。

4曲目「化粧」。
ストリングスと重たいリズムのイントロがとても印象的で個人的に大好きな雰囲気からのスタート。やっぱりこういう雰囲気の楽曲を作らせると超一級品だと思う。歌詞の説得力や深い重い音像が胸に響く。

飲みないお酒を飲んだのも
疲れていないフリしたのも
一秒でも 隣にいたいだけだったの
いつも優しく答えてくれたあなたなのに
諦め方は 教えてくれないのね

という歌詞が胸を抉る。でも、この世界観に浸って痛みを感じる事が苦ではない。目を瞑って胸を締め付けられながら、マイヘアの世界に深く入ってしまう。

5曲目「観覧車」。
孤独や承認欲求、そんな感情が渦巻いているように僕は聴いていて感じたのだが、ストーリーのある歌詞の中に様々な情景や感情が見え隠れしてきて、それを描く為の演奏がまた感情豊かに鳴らされて、とても素晴らしい楽曲だと思った。バンド感が凄く良く出ていて、カッコ良いし切ないし、ああこういうのがエモーショナルなんだよな。と改めて思った。

6曲目「ホームタウン」。
クリーントーンのギターイントロが綺麗で、どこかシティポップやはっぴぃえんどあたりを彷彿とさせる雰囲気を持っているなぁと思った。
これぞ椎木節とでも言うべき、ラップではない語り調のメロディがインパクト大で、相変わらず言葉の切り方強弱の付け方が気持ち良いなと思って聴いていた。サビ?に位置する

愛してる 愛されてる
たまに愛していない でも愛してくれる
ここにいる 誰かといる
たまに一人でいる たまに君といる

という歌詞が美しいコーラスで響き渡る。
過剰に激しい演奏じゃないので、言葉が耳にダイレクトに飛び込んできて、ずっと椎木の言葉を追ってしまう。この圧倒的なオリジナリティが大好きだなぁ。と改めて思わされた。

7曲目「one」。
楽曲と呼ぶのは少し違うと思う。
椎木の描く声と言葉の表現。凄まじいインパクト。なんというか、光と闇が全部この短い時間に内包されていて、人間そのものを表しているかのような興味深いトラック。気付いたら何度も聴いてしまう。
不思議な中毒性。

8曲目「愛の毒」。
40秒強で駆け抜ける愛の歌。こんな楽曲が許されるのも、マイヘアの特徴だろうなぁ。なんて思った。勢いだけで突き抜けて歌詞がストレートで、勢いに押されているとあっという間に終わってしまう。けれど、なんというか爽快感があって、満足してしまう。不思議な楽曲。

9曲目「lighter」。
重たいリフのイントロがとてもインパクト大で、アルバムの中でも珍しいタイプの楽曲だと思う。バンド感が前面に出てるなぁと思った。アレンジも他の楽曲より細かいところが凝っている。サビの重たいリズムが心地いい。

火をつけるから

という言葉にインパクトがあって、歌詞全般に渡って「火をつける」って表現が散りばめられている。アルバムの中では攻撃的な攻める楽曲だと思う。
でも、これだけのバラエティで鳴らされるアルバムだからこそ、こういう曲も凄くインパクト大に鳴り響く。

10曲目「怠惰でいいとも!」。
ああ、やっぱりマイヘアのこういう曲大好きだなぁ。椎木の語り調のメロディと言葉って、不思議な説得力があって、何度も何度も繰り返し聴きたくなる中毒性を備えている。
意味があるのかないのか分からないフレーズも含め、なんというかマイヘア・椎木節というか、他にはどこでも聴いた事がない感じだなと思う。
サビにエフェクトのかかったボーカルを持ってくるのも、なかなか聴かないよね。と思ったりした。
タイトル通り、「怠惰でいいとも!」を押した楽曲。それはそれで珍しいなと思う。

11曲目「虜」。
「怠惰でいいとも!」の後にこういう曲持ってくるから好きだ。めちゃくちゃ良い曲。

僕の最後になってくれよ 僕の最後にさ
君の最後にならせてよ 君の最後にさ
僕を君にあげるその代わりに
君の最後を頂戴

なんてロマンチック。1曲前とのギャップも含めてマイヘアの魅力にやられてしまう。
この幅広い楽曲群がまた強みだよなと思う。

12曲目「舞台をおりて」。
6/8拍子っていうのは、それだけでエモいと個人的に思う。バンドの一体感が増すというか、勢いが増すというか、椎木・山本・山田のスリーピースの音の塊が飛んでくる感じが堪らない。間奏のオクターブ奏法~ソロのギターもエモい。

物語の最後はきっとハッピーエンドがいいから

というフレーズが凄く頭に残った。
「最後」を想起させるような楽曲で、より胸をギュッと掴まれる。良い曲。

13曲目「芝居」。
とても壮大で、アルバムを締めくくるのに相応しいバラード。ストーリーがとてもある歌詞・タイトル、人生を舞台や映画に例えるようなとても考えさせる歌詞と、ミドルテンポで聴かせる演奏が最高のアルバムの終わりを演出している。
この楽曲はライブで聴きたいなぁ。
彼らのスケール感が大きくなってきている事を一発で実感出来るような、そんな1曲だと思う。
この楽曲を聴き終わった後に、また1曲目「君が海」に戻りたくなる。もう一度最初からアルバムを聴きたくなる。そんな楽曲だと思う。

さて、13曲聴いてきたが、素直に思ったのは単純にマイヘアの楽曲や演奏が確実に成長しているというところ。しっかり前に進んでるんだな。と思わされた。

どの楽曲のどこを切り取っても素晴らしい音と言葉が溢れていて、彼らの個性もより強くなり、唯一無二の存在になってきているなぁ。と思わされた。

これから先の彼らの更なる快進撃を確信出来るようなアルバムだった。きっと、マイヘアはもっともっと大きくなるし、ファンを増やして愛されるバンドになると思う。

このアルバムはその起点になる重要な作品になるようか気がする。だから、みんなにも何度も何度も繰り返し聴いてもらいたい。恐ろしい程の個性と魅力が詰まっているから。

My Hair is Bad – 4th Full Album「boys」全曲トレーラー

My Hair is Bad – 君が海

Kohei Murata

Kohei Murata編集長・ライター

投稿者の過去記事

バンド活動を通して、自分の音楽を世界に発信する事を志しながら、同時に仕事での独立を目指して様々な業種を経験する。バンドでは日本のみならず台湾でも活動を行い、台湾でのアルバム2枚のリリースや大型野外フェスティバルへの出演も果たす。
その後、様々な仕事を経験し2015年独立。
現在は音楽メディアOptimanotesの編集長兼ライターとして、記事の執筆をしている。

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