[Live Report] Sou – 2019年8月19日 Summer Tour「深層から見た景色」@品川ステラボール

すこし涼しく過ごしやすかった7月が嘘のように、むせ返る暑さが東京の街を包んでいる。品川ステラホールでは目前に迫った幕開けを待ち望む人々。会場の中では薄くかかった靄と観客の持ったペンライト薄い青色が水中のような雰囲気を作り出していた。日も傾き出す18時半過ぎ。おもむろにぽこぽこと泡が弾けるような音がする。そうしてゆっくりと重い水を掻き分けて舞台袖からメンバーが登場。少しの間。突然強い水色の光が当たりを照らし回った刹那だった。

「いくぜ!東京!」の掛け声とともにスーパーヒーローのお出ましだ。こうしてライブ「深層から見た景色」のファイナルは開幕した。舞台に2枚下げられた細長いスクリーンから、MVがのぞき窓のように映し出される。そこに現れるキャラクターがそのまま現実にでてきたかのようなSouのいでたちに息を飲む。二次元と三次元を繋ぐような彼の存在をまさに体現するかのような1曲目は『愚者のパレード』。自身が手がけた曲がトップを飾り、過剰なほどに光り続けるライトがスタートを彩っていた。

「ツアーファイナル、最高に楽しんでいってください!」そう歌い終わりに宣言したかと思うと「クラップユアハンド!」自身も腕を頭の上に掲げ、手を合わせるモーション。そうして舞台上から観客席をゆっくり舐めるように見つめていた。2曲目『トーキョーゲットー』ベースと目を合わせ、呼吸を合わせたかと思えば、「セイ!」鋭く短く観客に要求する。リズムを取るように、全身を揺らす。「改めまして、Souです。このあとどんどん曲をやるので、最後まで是非楽しんでいってください」

はじまった3曲目『ハングリーニコル』だ。「meal meal」で声を合わせる会場とその指揮者として君臨するSouがそこにいた。サビに至るまでのどこか力を抜いた嵐の前の静けさと、その瞬間になると急に叩きつけるような攻撃性を見せる、二面性がたまらない。「東京まだまだこんなもんじゃねーだろ、盛り上がっていけますか?……飛べ!!」セリフすら丁寧な言葉と命令口調が入り混じる。金切り声のような後ろの音楽がより一層この歌の危うさを盛り上げていた。

「ありがとう」歌い終わったお礼の言葉を述べるか述べないかのうちに.次の曲のSEの音声が突然降ってくる。4曲目『もう⽣きているだけで褒めて頂戴』だ。歌詞が上から降ってきては新たに更新されていく。まるでニコニコのコメントのようで面白い。「みんなつらいねえ 偉いねえ 本音はいつでも隠し持って 他損しないように精一杯 守るアイデンティティ 」体裁の良い・耳障りの良い言葉と、それに潜む棘がまるでネットの世界のようだと感じた。ビカビカの虹色の光がその二次元感をより強めている。歌い終わって、静寂。

そうして暗転。かと思えば淡いピンクで染まる会場。見えるのはゆるいSouの輪郭のみ。その中で歌われる5曲目『エリカ』。セリフのような歌詞とその心象世界のような空間が合間って、より一層Souの声が脳に近いところで、響いてくるみたいに、姿がぼやけているからなのか、際立って声が届いてくる。ラスサビ前、「la la la」と歌う瞬間だけ、はっきり彼が照らされて、どこか空恐ろしく見えた。

何かの爆ぜる音、さっと光が会場中に戻った。今度は舞台の上がはじからはじまで見渡せるくらいの明るさに。6曲目『波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。』先ほどまでの演出を作り込み、世界観に没入させるのではなく、すごくプレーンなバンドの演奏というギャップ。聴いていて変化が楽しい。

「改めましてSouです。楽しんでますか?僕だけかもしれませんが、めっちゃ暑いです。照明で見えないくらい人がいて、僕もびっくりです。」

「安定のMC何話そうタイムだ…いろんなところから、海外からも来てくれてすごいよね。ありがとう。この規模でワンマンライブをやるのは初めてです。ここにいる人は、僕の初めてを目撃しています。もっとイエーイって言っていいんだよ。盛り上がってください。」

7曲目『flos」今日1番の華やかな歓声が上がる。さまざまな花々を散らしたみたいな、色とりどりのライト。香り立つような艶やかさと色っぽさが舞台から溢れてくる。「拝啓 僕の願いよ 未来よ 絶え間無い後悔よ 」Souから届けられるメッセージのような歌に心揺さぶられる。

唐突なアップテンポさの発露。変化に観客はゆり落とされないよう必死に食らいつく。8曲目『いかないで』「泣いちゃだめ泣いちゃだめ でもホントは言いたいよ」あどけなさの滲む「いかないで」今度は彼が私たちに追いすがるような声で、そう歌う。ピンと張りつめたような強さ、凛とした気高さもなぜか同居していて、不思議な魔力がある。歌い終わった時にくるりと回って観客席を一面見渡す様子が印象的であった。

9曲目『ハレハレヤ』。和風な妖怪が登場するおとぎ話を見ているようであった。怪しげな劇のワンシーン。彼が舞台上で1人映し出される様は、花開く蕾みたいに艶やかで、ゆり動くSouから目が離せない。青と赤の光が朝と夜の対比を思わせる。「夜明け前貴方は早々と 此処から出て行ってしまった」

「酔いは覚めたかお嬢さん 何処へいくのかお嬢さん」10曲目は前曲の怪しさも引き継いで『鯰』だ。繰り返しの多い歌詞がどこかへ誘うようなリズムを作り出している。「愛してたのは 貴方だけ 愛してたのは 貴方だけ」言葉が聴き手に向けてまっすぐ飛び込んでくる。そうして曲は終わり、劇のような世界観も終焉を迎えた。

「みなさん楽しんでますか?MCのコールは毎回こうやるって決めてました。早いんですが、早いといえば、僕の誕生日でした。21歳。ただゲームやってる21歳だけど、今日だけは違います。6年間続けてきました。今日のライブも一瞬で、人生って早いなーと焦る。報告です。本当今日横に長いね。クロールできそう。……これから盛り上がっていけますか?『Q』」

11曲目は彼がそういったように『Q』。「ハイ!ハイ!ハイ!」の掛け声が会場を走る。光が点滅する。かと思えば一瞬の静止。そしてはじまるサビでは赤と白のパトランプのような光線が爆発するように会場中にこぼれ、溢れる。「さあ掻き鳴らせ証明の歌」感情がぶち込まれ、歌として表現されている感覚が確かにあってその瞬間瞬間が心地よい。

12曲目『アイラ』唸るギターの音。舞台上を左に、右に。縦横無尽に闊歩する。このライブでは圧倒的に彼が主役存在だ、そう思わせる圧倒的な音。その歌に乗って、自分を観客に見せつけるように歌う姿と、それを時折確認するような仕草を見せた。

浄化されていくみたいな白い光に包まれたあとに間延びした青と黄色の灯りが揺らめく。13曲目『シンソウ』ネオンサインを模した文字で書かれた歌詞。綺麗な背景に浮かぶ。一歩一歩着実に歩みを進めていくような音楽の進行。光の届かない深海に次第に落ち込んでいくみたい。「 “アイ“と呼ぶには少し淡い雨 混ざってゆく青は「サヨナラ アダム」 その色を僕は蒼(Sou)と名付けた」

14曲目ここで「グレイの海」。全体的に歌の順番がバランスよく、曲と曲同士が意味を持って連ねられているように感じる。「夢の果てには グレイの海が 貴方と行こう 砂に消えた涙」ライブでこの歌を聴いていると波が寄せては返すようリズムだと感じる。だからだろうか、どうしてか懐かしく落ち着いてしまう。「夜が用意した その命にさよなら」。

「残念なお知らせがあります。2曲で終わっちゃいます。」
「えー!」
「このくだり、ツアーでライブ3回やっているから、3回目なんだよねw。こう言うものは終わりが来るからいいんだよ。明日はゆっくり寝ようと思います。」
「いつものやってー」の声が舞台近くから上がった。
「……僕が知らない人のためにやります。Souだけにー?」
「Souかーい!…がお決まりになっていて最近爽快じゃなくね?の声も上がってるんだけど、気にしないでいきましょう。」
「Souだけにー?」
「Souかーい!」
「ありがとうございます。すげー横に長いんだから、声最大に出して。Souだけにー?」
「Souかーい!」
「ふふ、ありがとうございました。さすがにもうやらない。」

「無事にツアーファイナルを迎えられて、アルバムを引っさげてのツアーでしたが、中学生の頃から活動を始めて、時間が経つのはあっという間。アルバムが発売したのはつい最近だと思っていましたが、もう3週間前のことです。歌ってみたをやっていく中で、よくこんなに続いたと思う一方、変わっていくのはどうなんだろう、と不安に思ったりもします。格好いいのが好きだったり、可愛いのが好きだったり、自分で曲を作りたいと思ったりする中で、変わらないのは音楽をやっていくと言うことです。言うて21、この活動を続けていくにしてもいろんな方向に進める歳なので、変わり続けるけれど、音楽好きは変わらない。見届けてください。無限にやります。これからもよろしくお願いします。最後の2曲は、単に自分が好きで歌ってみて投稿したのですが、それが弾けて僕といまこの場に来ている人たちを繋いでくれた思い出の曲です。そんな曲で、ツアーの最後を飾れることが、とても嬉しく思います。」

そう紹介があってからはじまったのは15曲目『心做し』オレンジ色で優しい光に包まれる。シンプルな演出。思い入れのある歌だからだろうか、これ以上ないくらいに感情の詰まった歌い方に聞き惚れてしまう。中央からほとんど動かず、ひたすらに音に魂を込める彼がそこにはいる。「あーーー」切なそうに叫ぶ。「ねぇ、もしも僕に心があるなら どうやってそれを見つければいいの? 少し微笑んで君が言う 「それはね、ここにあるよ」」

「この曲で最後です。聴いてください。」

そしてこのアルバムに収録された『心做し』の続編になる『証として』が16曲目。真っ黒な背景に真っ白な文字が出ては消えていく。海に浮かんでは消える泡を思い出す。先ほどまでは舞台の中央でじっとしていたけれど、一転して動きのあるアンサーソング。心象風景を思わせる官能的な桃色に、ほのかな青と白のスクリーン。「僕が生きる意味はあるだろうかだけど 君に逢えたこんな世界が 何故か愛しいと思ってしまった そう思えてしまった」感情的なだけではない、力強さが加わって、ラストを飾るにはふさわしい、圧巻の叫び。

「どうもありがとうございました」そういって舞台を去った。

静けさがもどってすぐ「アンコール!アンコール!」の声が上がる。5分ほどで「アンコールありがとうございます。まだまだ盛り上がっていけますか?」とライブTシャツに身を包んだメンバーが戻ってきた。

アンコール1曲目にふさわしくアップテンポな激しいチューン。「ロケットサイダー」水色の独特なアイキャッチが映画のフィルムのように連なって、映し出されている。「いくぞーー!」感極まったように、楽しそうに走り回るSou。星々の中を探検する宇宙船のようにも、満点の明るさをもつ一等星にも思えた。

「残り2曲とは言いましたが、アンコールはさすがにあります。最後まで楽しんでいってください。ここで一緒に駆け抜けてきた仲間たちを紹介します。」

「ギター リプTONE―!!」両手をあげみんなに挨拶する
「キーボード 森谷―!!」「……ちゅいーん、宇宙と交信しています」
「ドラム ぶるーの!!」「毎回言っているんだけど、ツアーロゴの入っているドラムかっこいいよね」
「ベース 熊吉郎!!」「この前まで同い年だったんだけど、今日で先輩後輩の関係になりました」
「袖に隠れているけどマニュピレーター米田直之!!」「いよーーーーっ」

「ツアー来てくれたみんながいたからできたことです。テンションが上がっちゃって、言葉は脳内にあるんだけど、アウトプットが上手くできない…次の曲やります。『サマータイムレコード』」

アンコール2曲目は『サマータイムレコード』だ。認知度の高いこの曲だから、観客からは大きなどよめきの声が上がる。夏らしい疾走感のある曲調、そのどこかに切なさも混じっていて、終わり間近なこの場面にぴったりだ。「笑い合った夏の日に 「また何処かで思い出して 出逢えるかな」って」

「いよいよほんとにほんとに最後。またいつか体力が回復したらやりましょう。あ、写真撮りまーす。写真写真。」
ここでハッピバースデーの音楽がかかる。
「えっえ、まじかこういうのか!」みんなでお祝いの歌を合唱。
「すごくたくさんの人に祝ってもらえるなんてなかなかない。アドリブだとなかなか上手く言えないんだけれど、素敵な曲だったり、歌だったりをこれからも届けていきたいと思います。」

「次やる曲、ノイドなんですけど、僕の作った曲で始まって、終わる。それがこれからに向かっていくのかなーなんて思ってアルバムのリード曲なんですが、アンコール一番最後に持ってきました。頭空っぽにしてはっちゃけて、思い残すことなく楽しんで聴いてください。」

最後の曲は彼の手がけた『ノイド』。一音一音終わっていくこの瞬間を、歌を惜しむように、歌い上げる丁寧さが嬉しくも切ない。一方で残すものがないように、出し尽くすような、絞り出すような、激しさもそこにはあって、身体をめいっぱい動かして、エネルギーを放出し続ける彼がかっこよく、可愛らしく、そうして終わりを迎えるそのときまで、常にSouの最高の姿があった。

「ありがとうございます。またどこかでお会いしましょう。」

【セットリスト】
01, 愚者のパレード
02, トーキョーゲットー
03, ハングリーニコル
04, もう生きているだけで褒めて頂戴
05, エリカ
06, 波に名前をつけること、僕らの呼吸に終わりがあること。
07, flos
08, いかないで
09, ハレハレヤ
10, 鯰
11, Q
12, アイラ
13, シンソウ
14, グレイの海
15, 心做し
16, 証として

アンコール
EN01, ロケットサイダー
EN02, サマータイムレコード
EN03, ノイド

text by Rina Ogata

photo by 清水基揮(Styler86)

尾方里菜

尾方里菜デザイナー・ライター

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表現することが好きな、どこにでもいる普通の人。思い立ったらなんでもやりたい。我慢できない性質(たち)。
現在はデザイナーとして修行しつつ、このメディアでライターも経験させていただいております。
趣味は写真を撮ることと絵を描くこと。好きな言葉は「鳩だって死ぬところを見るまで不死身だ」よろしくどうぞ。

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