[Live Report] 石崎ひゅーい – 2019年9月8日 アコースティックライブツアー「あの夏の日の魔法」@浅草花劇場

9月8日。青空に夏らしさの残る雲が浮かび、蝉が元気よく鳴いていた。気温は30度を超え、残暑というには暑すぎる、夏真っ盛りのようなこの日、ツアーファイナルを迎えた石崎ひゅーい。

この日の会場は、前日からの2日間の公演となる、東京浅草花劇場。
観光客でごった返す賑やかな浅草で、会場の雰囲気はどこか奥ゆかしく独特の秘密めいた空気を含んでいた。
ライブへの期待なのか、または夜遅くに上陸しそうな台風への心配なのか、ザワザワと胸騒ぎを感じながら会場にはいる。

6月からスタートしたツアー「あの夏の日の魔法」は全23か所25公演。浅草花劇場のほかにも素敵な佇まいの会場が多かった。夏休み、田舎のおばあちゃんの家に帰ったような疑似体験をしたお客さんもいるのではないでしょうか?
東京のチケットは発売と同時に両日ソールドアウトしていたという。
初日もなんとかチケットを手に入れライブを見ることができたので、ファイナル公演に加え、この日の様子も織り交ぜつつお伝えできたらと思います。

オープニングSEにはヒグラシの鳴き声。もうすぐ終わってしまう夏を少し名残惜しく思いながら開演を待っていると、ひゅーいが登場し客席を見渡しながら両手を合わせた。
ギターを抱え、ヒグラシの声に重ねるように美しいアルペジオを奏でるひゅーいが、すぅっと息を吸った。魔法の扉が開くような瞬間だった。

『あの夏の日の魔法』。ツアータイトルでもあるこの曲を、誰もがそのひとつひとつの音をこぼさないように静かに聴き入っていた。
「石崎ひゅーいです。ファイナル東京、来てくれたみんなありがとう。」と挨拶し「今回のツアーはノスタルジーというのをテーマにしています。今の曲は、幼少のころの出来事を歌にしました。最近の目まぐるしい変化について行けなかったときは振り返ってもいいじゃない?未来ばっかじゃなくてさ。ノスタルジーって魔法みたいでもあるなぁと思っていて。今日が魔法のような一日になればいいなと思います。」と語った。
と思ったら「飛ばしてっていいですか?」とフルパワーで『あなたはどこにいるの?』を披露。
早速、そのギターと歌声で、表現力の凄まじさをビシビシと感じさせられてしまった。
「どんどん行きますよ」と煽り『僕がいるぞ!』。
座った椅子から今にも飛び出しそうなほどの全力投球で演奏しつつ、満員となった会場の一人ひとりを見て、その反応を受け取っているのがわかる。

「朝、夢を見まして。ギターを背負って電車に乗って、今日の会場に向かってるんです。浅草駅に着いてリハーサルに向かうんだけど、ホッピー通りが見えてきて。結局そこで酒飲んじゃってリハーサルやらないっていう、ダメ人間でした」と話し『ダメ人間』へ。
ダメ人間と繰り返すこの曲の主人公は、ダメな奴なんだけどなんだかとても愛おしく、そのままでいいよね。って思えてしまう。
曲がおわり、おもむろに手を叩き始めたひゅーいに、オーディエンスも重ねる。テンポが違ったのか首をかしげながらテンポを落とす。うんうんと頷き、手拍子に合わせ『マシュマロパイ・サンドウィッチヘヴン』へと突入。狂気の入り混じった空気に会場が飲み込まれていく。かき鳴らすギターは荒々しい中に繊細さも感じた。弾き語りだとこんな風に変わるのかと驚いた曲でもある。
タオルを手に取り「まだ5曲目なんですけど」とゴシゴシと拭いたひゅーいの顔はもう汗だくだった。

「このツアー6月から回ってて、色々あったんです。今日は何を話そうかなーと。ツアーに出るとおいしいものとかあって、すごく美味しかったものはレシピを聞いてたんです。それを教えるってどうですか?」と。客席は若干戸惑っているようにも見えるが、ひゅーいは続ける。
富山で食べた美容と健康に良い火鍋と、こちらも美容にいいという広島のレモネードのレシピを詳しく紹介し、「あと、おっぱいが大きくなるには、鶏肉。とキャベツと、豆乳。」『おっぱい』へと繋げる。
囁くような1,2,3のカウントに合わせギターをノックする音が心地よい。
そして「飲めない酒をのんで~」からはアカペラでアンプラグドのような(実際にはマイクを通していたけれど)生々しい声がダイレクトに胸に響いて涙腺が緩んだ。
――前日のMCでは、石垣島で入った食堂にギターがあり、店主が最近覚えたというあいみょんの『君はロックを聴かない』を披露してくれたそう。その後食中毒になってしまい大変だったけど、結局こんな風に話ができたから感謝していると話した。

続いて『ピリオド』。MVでひゅーいと背中合わせの菅田将暉が泣きじゃくるシーンが印象的でもあるが、消えそうな声や泣きじゃくるように歌うその姿も、映画のワンシーンを見ているようで胸に突き刺さる場面だった。

――前日はこの2曲(おっぱい/ピリオド)の部分は、『ガールフレンド』と『花瓶の花』が演奏された。
これらのひゅーいを代表する名曲も圧巻の演奏だった。会場のあちらこちらで涙をそっと拭いている姿を目撃した。

明るくなった会場を見渡しながら、「このツアーでみんなに聞いてたことがあるんですけど、今日初めて来てくれた人っていらっしゃいますか?」と。10人ほどだろうか、手が挙がっているのを見渡しながら、「初めましてという方に、石崎ひゅーいのライブのルールをお伝えします。」とテーブルに置かれたポーチを手にする。いくつかのグッズを紹介し、これを帰りに全部買ってもらいます、と冗談めかして笑う。「すみません、ウソです。石崎ひゅーいのライブにはルールは一つもございません」と、好きなようにライブを楽しんでほしいと伝え「よろしいですか?『メーデーメーデー』!」と叫ぶと同時に一気に熱を上げる。赤い照明がステージをより一層熱く演出した。
その勢いのまま、一緒に歌ってほしいと伝え『1983バックパッカーズ』へと突入。待ってましたといわんばかりにYeah Yeah Yeah~♪と歌うオーディエンスには笑顔があふれている。
『SEXY』では赤と青の照明、ギターの音色、早口で歌うだけでなく囁いたり絞り出すような声、多彩な表現で魅了する。


「こんなところに偶然ピアノが」といいながらピアノに向かう。
「さっきも触れましたが、ノスタルジーって今回のツアーのテーマで。語源を調べてみたんです。〈何かを思い出したりするときに感じる痛み〉のことで、その痛みの病名らしいんです。とってもいい病気だなって思ったんです。僕は痛みを歌にすることが多いんですけど、痛みって美しいと思っていて、その美しさを曲にしたい。好きなんです僕は、そいうのが。」と丁寧に話した。
ひゅーいの歌の中にある痛みには、絶望や悲しみだけじゃなく何か温かくなるものを感じる理由が、そこにあったように思えた。

そして今回のテーマにぴったりの曲『ひまわり畑の夜』。
ライブでピアノを弾く姿を初めて目にしたが、このピアノがひゅーいの声にどこか似ていて、ノスタルジーの世界をさらに引き立てていた。すこしハスキーで切なく優しい音。このピアノは本人の私物で10年以上前から使っているという。
動物が飼い主に似るという話はよく聞くけれど、楽器も持ち主に似たりするのかな、なんて思ってしまった。

引き続きピアノで『ピノとアメリ』これもまたなるほどと思う選曲。丁寧に弾くその指をなぞるように、丁寧に歌う。この曲のジャケットの世界観に似た水中のような青いライトに照らされ一層切なさが増していた。

2曲を終えたところで「もうちょっとピアノ弾いていい?」と予定になかった曲を急遽。
突然のサビからの壮大さに圧倒させられてしまった『花瓶の花』。ワンコーラスだったのがもったいないほど素晴らしく、いつかピアノでフルコーラスを聴かせてほしいと思わずにはいられなかった。

ギター位置へと戻りながら、「外どうなってるんだろうね」なんて気にしつつ、10月に行われるファンクラブイベントと、11月末から東名阪で行われるバンドワンマンツアーの嬉しい報告。
「ツアーの題名はパッションです。今回弾き語りで全国を回って、みんなからもらったものがたくさんあったので、11月から爆発させようと。みなさんパッション磨いておいてください。」
そしてこのツアー中にデビュー7周年を迎えたことに触れ、「全国に待っててくれる人がいて、僕は東京に住んで曲を作ってるわけですけど、(各地に)届いてたんだってのが嬉しかったです。大切にしたいことや、しなきゃいけないもの、時には手放さなきゃいけないこともあるけど、そういう大切なものみんなもあるでしょ?これからもそういうものが届けられるよう日々精進していきます」と新たな決意を語った。

そして配信されている新曲『Namida』を「純粋な素直な言葉で書いた曲、聞いてもらって良いでしょうか」と紹介。ほんの少しスローなテンポで音源のキラキラしたアレンジとはまた違う、温かく美しいメロディが一層際立ち、圧倒的な声量と表現力で色鮮やかな景色を見せてくれた。

ライブが、そしてツアーが終わりに向かっている寂しさを感じていると「ここにいるみんなに、心の底から愛こめて」と『アンコール』を。
ライブでアンコールをしないひゅーいにとって、この曲はお客さんに向けたラブソングそのものなんだと、歌声を聴きながらずっしりと響き胸が熱くなるのを感じた。

「最後の最後の山場です」といい、終わるのを惜しむようにゆっくり息をし、水を飲んだ。
「もう何も残しません」と全て出し切ることを宣言し、『さよならエレジー』
照明で赤く染められた客席を目に焼き付けるように見渡していた姿が印象的だった。
バンドライブではステージを飛び回り、時には床に倒れこんで全身を使って表現するひゅーいは、弾き語りではそれができない分、全身全霊をギターと歌に込めていることがわかる。
――前日のMCでは「昨日、菅田将暉くんのライブを見に行っていて、この曲のときにマイクスタンドが二つ用意されて、あれ?僕呼ばれるんだっけ?ここで名前を呼ばれたらここを通って、1分くらいでいけるかな?と腰を浮かせてたら、呼ばれたのは山崎賢人さんでした。今日はその鬱憤を晴らします」と笑わせた。

「次の曲で最後です」と切り出し「こういう美しかったり、尊かったり、綺麗だったりする時間はあっという間に泡のように消えてしまうものです。だからこそ、夢のような魔法のような時間でした。ありがとう」と伝え、ラストは『夜間飛行』。
ひゅーいの爆発に引火したかのように、一人二人と椅子を立ちはじめ、会場全体があっというまに総立ちとなった。するとひゅーいも自分の椅子を後ろに下げ、マイクを上げ、立ちあがった。
完全に一体となった会場全体でシンガロングが巻き起こっていた。笑顔が咲き、爆発が連鎖する。まるで花火大会のフィナーレのようだった。
「夜空を飛んで会いに行く」というおなじみのコール&レスポンスでは、メロディを変え難題を出すひゅーいに見事に返すオーディエンス。そんなやり取りが何度か繰り返され、とんでもなく息の長いコールをすると、客席からも長い長いレスポンス。「俺より長いのやめてもらっていいですか」と笑い、「長いツアーでしたけど、最後の最後に伝えたい。夜空を飛んで会いに行く!!!何度でも帰ってきますからね!」とファンを喜ばせた。
「今日を忘れません」と噛みしめて、深く長いお辞儀をしてステージを後にした。

1時間40分、夏の終わりのひとときを過ごし会場を後にするひとたちの笑顔は、まだしばらく溶けない魔法にかかっているようだった。

【セットリスト】
01,あの夏の日の魔法
02,あなたはどこにいるの
03,僕がいるぞ!
04,ダメ人間
05,マシュマロパイ・サンドウィッチヘブン
06,おっぱい
07,ピリオド
08,メーデーメーデー
09,1983バックパッカーズ
10,SEXY
11,ひまわり畑の夜
12,ピノとアメリ
13,花瓶の花(ワンコーラス)
14,Namida
15,アンコール
16,さよならエレジー
17,夜間飛行

富ぃ。

富ぃ。ライター

投稿者の過去記事

邦ロックを中心に年間60本以上のライブやフェスに参戦する根っからの音楽ファン。好きが高じて音楽ライターをスタートさせる。
モットーは、ファン目線で親しみやすい文章を書く事。好きなものだけにフィーチャーし、好き勝手書いている。

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