[Interview] ACIDMAN – デビューアルバム「創」のLP盤をリリースするACIDMANのブレイン、大木伸夫へロングインタビューを敢行!

今回は10月30日に記念すべきACIDMANのデビューアルバム「創」のアナログ盤をリリースする、ACIDMANの核でもあるギターボーカル・大木伸夫さんに、なぜ今デビューアルバムのアナログ盤なのか、なぜ今再現ツアーなのかなどお伺いをした。
また、普段聞けないようなプライベートにも突っ込んだお話を色々と聞く事が出来、非常に有意義なインタビューになったと思う。
ファンの方はもちろん、それ以外の方もこれをきっかけにACIDMANの音楽に興味を持って聴いて頂きたいと心から思う。
それでは、インタビュー楽しんでください。

邑田航平(Optimanotes編集長)

――本日はよろしくお願いいたします。

大木伸夫(以下、大木):はい、お願いします。

――今回10月30日にメジャーデビューアルバム「創」の完全数量限定生産でアナログ盤がリリースされます。このタイミングでメジャーデビューアルバムである「創」というアルバムをアナログ盤でリリースをする経緯を教えて下さい。

大木:この「創」が発売されたのは2002年なんですが、そこから17年もの間ずっとメジャーのフィールドで音楽をやらさせてもらっていて。デビュー当時は、ありがたいことにすごく多くのお客さんに受け入れていただいたアルバムなんですけど、ツアーとしてはそんなに大きな場所ではやれていなかくて。東名阪だけ。大阪で2〜300人、東京でも3〜400人のキャパでしかやれていなくて。いつかずっともう少し大きな3,000人規模ぐらいで「創」のアルバムのツアーをやりたいなという思いがありました。もう一つは、数年前に僕はレコードにすごくハマってしまって。レコードで聴く音、体感する音の素晴らしさみたいなものがすごく好きになしまして、同時に自分の曲もレコードになったらいいなっていう思いが溢れてきて、ツアーのない時期だったのでちょうどいいタイミングかなと思って決めました。

――アナログ盤にしたいということを各所の関係者の方たちと話して決まったのですか。

大木:ユニバーサルミュージックさんに相談して、そしたらすぐOKしていただいてやりましょうってことで。

――アナログ盤のリリースと今回の再現ツアーはセットで考えて、アプローチをした結果今に至るということですか。

大木:アプローチした時はセットでしたね。もともとの発想はバラバラだったのですが、ちょうどアナログ盤をリリースするので、これのレコ発ツアーみたいにすればちょうどいいじゃないか、ということでくっつけたという感じですね。

――17年の時が経って、今回アナログのマスターテープから最新のリマスタリングをしています。大木さんは聴かれてどんな感触ですか。

大木: 17年前の自分の初々しさとか、演奏の荒さとか下手さとかあるけれど、いいアルバムだなって素直に思えましたね。荒削りであるし、本当に何かにあらがっているミュージシャンなんだな、みたいな。言いたいことは言葉ではうまく言えないんだけど伝わってくるよ、わかるよ君たちのやりたいことっていうのが客観的に見れてすごくいいアルバムだし、自分のことなんだけど、いいボーカリストだなって思いましたね(笑)。自分ではないかのように聴こえる。この子はいいもん持ってるねみたいな。売れる気がするって思いました。はい(笑)。

――もしもそれが新人バンドで、こういった音楽をしていたら、関わろうと思いますか。

大木:そしたら僕、手をあげますね。プロデュースやりたい。うちの事務所にぜひってあげると思いますね。

――このアルバムはACIDMANというバンドのコアな部分がすごく初期衝動的に詰まっていると思います。当然現在の方が音色や、アレンジは洗練されているのかもしれないですがすごく魅力的です。最新作を出すので限定生産でアナログ盤を出しますという話はよく聞きます。しかし、リイシュー的にリマスターして、敢えてこのデビューアルバムをアナログ盤で出すというところが粋だと感じました。

大木:粋と捉えていただいてありがたいです。

――今回の再現ツアーは、当時東名阪で回ったツアーをそのまま再現する試みなのか、それとも改めてこの「創」というアルバムを提げて最新の曲も混ぜつつ、いいバランスでの今のACIDMANというものを見せていこうというスタンスなのか、それはどちらでしょうか。

大木:実はまだまとまっていないんですよ。

――再現ツアーというタイトルなので、最近のライブでは古い曲はやっていないと思いますが、それを沢山聴ける場になりますか。

大木:チャンスでもある。

――「創」のツアーで、こういう楽曲たちを生のライブで体感できなかった方たちが、今回やっと体感できるという貴重な経験になると思います。この再現をするにあたり、演奏も最近のリハーサルではしていなかったのではないかと勝手に想像致しました。ご自身で耳コピをするなどしたのでしょうか。

大木:結構忙しくてできなかったんです。つい最近まさに耳コピしまして。2、3箇所だけわかんなくてスコア見ました。こうやってたのかって(笑)。

――17年前に作った楽曲で、最近は演奏していなかった楽曲を全部覚えてるかと言われたら難しいと思います。

大木:難しいですね。十何年以上やっていない曲もあるので。

――実際にそれら楽曲を弾いてみて、その感触というのはどんな感じでしたか。

大木:一度思い出しちゃうと手癖とかもあるんでしょうけど、本当にすぐ体に馴染んで。意外と最新作の普通のアルバムツアーに向ける練習よりは、一回思い出せばすぐできるっていう感じだったので、ちょっとそこはホッとしましたね。最初はちょっと焦ったんですけど、やってみたらちゃんと馴染んでたみたいな。

――昔演奏していたので、それが馴染んでいて、体が思い出した感じでしょうか。今回はキャパ的に大きい会場で、Zepp Tokyoや新木場 Studio Coastなどです。ACIDMANはもっと大きな会場で演奏するイメージがあるのですが、この3000人ぐらいのキャパというところをピックアップして会場選びをしたのはそこにこだわりがあったのでしょうか。

大木:いや、僕の中ではそれぐらいがちょうどいいのかなと思いつつ。日本武道館とかでずっとやっていたから、そういうイメージだと思うんですけど。(武道館では)6回やってますね。
3,000人入るキャパで生々しいライブ感を味わえるところでは、僕はZepp大好きで。新木場 Studio Coastは、昔からイベントではよく出たことあるんだけど、ワンマンでやったことはないんですよ。好きな箱だしワンマンでやってみたいなっていう思いもあったので。その二つにさせてもらった感じですね。

――キャリアは長いけれども、新木場 Studio Coastのワンマンは今回が初になるのですね。

大木:そうですね。ずっとZepp Tokyoとか日本武道館とかだったので。

――17年間のキャリアを積んできた上で、ACIDMANのコアみたいな部分というのは、変わっていないと思っています。ただ表現方法などは変化をしていってると感じます。例えば、再現と言いつつ今のACIDMANの要素をうまく楽曲のアレンジであったりとか、音色づくりに取り入れて、ブラッシュアップした「創」を作り出すようなことは考えないですか。

大木:多分やってないですね。難しいと思うし、まぁ年はとってるから声は変わってるし、プレイもみんなある程度のスキルは上がってきているので必然的に変わってくるとは思うんですけど。意図的に変えるっていうことは非常に難しい。できないと思いますね。

――「創」に入ってる楽曲たちを今のACIDMANが演奏しているので、今のクオリティで演奏をすると、今の声と歌い方で再現されるという事ですね。

大木:それを楽しんでもらえたらありがたいですね。

――アナログ盤にここ数年ハマったというお話がありました。ハマったきっかけはなんですか。

大木:具体的な理由はわからないですけど、僕の周りの身近なスタッフにものすごいアナログマニアな方がいて。2万枚ぐらい持ってるのかな。いつもお酒飲んでその方の家に遊びに行って、いいなとは思っていたんですが、勝手に敷居高いなと思っていて。僕は昔からシガー・ロスが大好きなんですよ。普段は家で音楽を全然聴かないんだけど、シガー・ロスだけは毎回CDを買って聴いていて。それを何度も聴くんですよ。それつながりでアイスランドのミュージシャンが結構多くて。パスカル・ピノンっていう女性デュオや、オーラヴル・アルナルズとか。

――結構マニアックだと思います。

大木:結構マニアックです(笑)。ヨハン・ヨハンソンとか。映画音楽的なものをCDで持っていて。そういうのを夜な夜な聴いてて。ある時シガー・ロスがレコードを出すっていうニュースをWebで見て。レコード出すならちょっと買ってみようと思って。プレイヤーは古いやつを持っていたんです。ちょっと興味本位であんなにみんながハマるのは何でだろうって買ってみて。まずジャケットがデカくて嬉しくて飾りたくなる。やっぱアナログ、レコードいいなぁと、何枚かは持ってるんだけど、魅力がそのくらいだったんですよ。デカくていいなぁぐらいの魅力で。それが、実際に聴いてみたら、音がすっごい良くて。CDって耳で聴いてる感じなんだけど、アナログの場合は浴びてるというか。小ちゃな音でも明らかに違う音が、耳の裏が響くみたいな感じなんですよ、例えると。そんな経験あんまり味わったことがなくて。しかもずっと聴いていたCDだからこそ、全然違うわって。CDももちろん素晴らしい。CDは研ぎ澄まされているっていうかハイクオリティ。アナログは体で浴びている。それがすごく良くて。そこからアナログの世界を調べてみたらものすごい深いところに。沼だったんで。僕凝り性だから、その沼にまた魅了されて。うわぁ、まずプレイヤーから買い換えようとか。

――針にもこだわりますか。

大木:つい先日針買いました(笑)。それでコンプリートです。いいやつを買っちゃいました。

――スピーカーと繋ぐケーブルや、スピーカー自体などにもこだわりますか。

大木:スピーカーも買い換えて、アンプも。全部換えましたフルセットで。こんなでかいの(インタビュー場所にあったスピーカー)、キープしてたんです。キープというか見てたんですよ、ホームページで。でも高いじゃないですか。モヤモヤしてたんですよ。家にこんなデカイのを置いても現実的じゃないかなぁって思いながら。でも買いたいなぁって悩んでるうちにSOLD OUTになってて。やっぱ売れちゃったか、まいっかって思った数ヶ月後、ここに置いてあるんですよ。日本にはそのお店にしかなかったんで、多分そこでユニバーサルミュージックさんが買った。大金持ちになりたいと思いました(笑)。

――このスピーカーは、そんなにレアなスピーカーなのですね。このサイズのスピーカーで純粋に音楽を楽しもうと思った時はボリュームを上げないと気持ちよく音を浴びれないと感じました。

大木:家で聴くとなるとちょっと現実的じゃないかな、とは今慰めてます自分を。

――完全防音のリスニングルームがないと難しい気がします。

大木:じゃないと無理だと思います。

――シガー・ロスがきっかけでアナログ盤を購入し、「なんだこの浴びる感覚は。すごいいいじゃないか。」というところから入り、そこからは様々なアーティストのアナログ盤にも手を出したのでしょうか。

大木:サブスクリプションとか、僕は大賛成ですよ。これからの音楽シーンに向けてどんどんひらけていくべきだし。かたやアナログという音の良さだけではなく儀式のような感じっていうのかな。一個一個袋から出して、針も掃除して、ゆっくり針を落として聴く。ターンテーブルが安定するまで、その光を。古いプレイヤーを買ったので。それも安定するまで見るとかって、一つの儀式のように超めんどくさく丁寧に音楽を聴くっていうのが最高の贅沢だと思っていて。この両軸でいくことの美しさっていうのをすごく感じているので。こんなに贅沢に聴くのは、自分が一番好きなジャンルしか聴かないって決めて。ロックバンドやっておきながらピアノの音だったり、クラシックの音が好きなんですよ。ヨハン・ヨハンソンだったり。これもマニアックですけど、ドイツのユップ・ベヴィンっていう190cmぐらいあるピアニストがいるんですよ。こんなヒゲモジャの。ポスト・クラシカルって言われているジャンルですね。暗くなるような音楽。ピアノ。ただただそれを聴いている。そういうのばっかり探してて。そういうの以外のでは、一度レッド・ツェッペリンを買って聴いてみたんですけど、レッド・ツェッペリンとして聴きたいから、別にレコードじゃなくていいなと思って。響きで心がリンクするようなもの。染みるようなものに限って買っています。

――勝手なイメージなのですが、レコード=ジャズとクラシックが強いというイメージがあります。今仰ったピアノの音色のお話ですが、アナログで録音したピアノ感がしっかり出るイメージを持っています。

大木:その通りだと思います。ジャズもいっぱい良いのがあって、いろいろ聴いてます。ビル・エヴァンスとか、すごくピアノがいいですね。ジョン・コルトレーンとかあらためて聴くとすごくスピリチュアルな人だなっていうのが伝わってくるんですよね、音楽で。メンタルがわかるなみたいな。すごく伝わりやすい感じですね。

――悪い言い方をすると、デジタル音源は少し味気なさを内包している部分があると感じています。

大木:あとで調べたら、本当に波形で切っちゃうみたいですね。人間の耳で聴こえないとされているものは上下カットしてるのがCDで。レコードはそういうこと関係ないから、僕らの耳では認識できないけど音としては鳴ってるんですよね。スピーカーからのね。それを気持ちいいと僕は感じたんだと思います。

――聴感上では、はっきりとは聴こえていないですが、体は敏感なので、そういった音の波形とかが影響をしているというのは絶対にあるのだと思います。

大木:響きを浴びてるんですよね。

――アナログ盤にハマっている。という事にすごく共感できる部分だと、今聞かせて頂き思いました。

大木:これを見てくれている人も、本当にハイクオリティのものを揃える必要はないので、まずは簡単に聴けるもので数万円であると思うんです、プレイヤーなんて。それをスピーカーにつなげば、まずはどんな響きかわかると思うので。これがアナログかって知ってもらえたら嬉しいですね。贅沢な聴き方を。

――今回の「創」はCDや配信とは音質が絶対的に違うと思いますので、これを入り口にアナログ盤にハマる方が出てきたら楽しいと思います。

大木:今アナログの市場が伸びているのもそういうことだと思うんですね。音楽が簡単に聴かれれば聴かれるほど、難しくめんどくさく聴かれるものの価値が高まってくるんだと思うし。それは僕らもそっちの方をどんどん強めていきたいなと思ってます。

――これだけ手間をかけて、プツっとレコードに針を落として、音が流れ始めた瞬間の感動は、アナログ盤特有の体験だと思います。

大木:今話してて思ったけどキャンプですね。アナログはキャンプです。キャンプと一緒な気がしてきました。同時期にキャンプにハマってるんですよ(笑)。だからリンクする。キャンプなんだ。

――キャンプはこれからの季節が一番良い季節ですね。

大木:キャンプですよ、アナログ、レコードと。

――今現在、デジタル最先端も必要だと思いバンドとして推し進めていますよね。アナログであったり、キャンプで火を起こそうみたいなことにフォーカスがいっていて、大木さんの中では両極という事ですね。

大木:何から何まで揃っているホテルも泊まりたいし、何にもないところで夜空を見るのも大好きだし。どっちかっていうとキャンプの方が好きだけど、どっちも好きです。

――その振り切れ方は、中間がなく素敵だと思います。

大木:日々の生活が、それに当たりますね。

――敢えて日常ではない非日常感として、その両極があり、両方大切という感覚ですね。とても面白いお話を聞けました。キャンプは頻度高く行くのでしょうか。

大木:今年は忙しくて1回しか行けてないんですけど、年に3回ぐらい行ってるかな。テント張って、焚き火たいて、飯作ってっていう。大好きですね。

――キャンプはそれぞれのテントで対抗意識みたいなものがあると聞いた事があります。実際にそういった事はあるのですか。「他のテントよりも自分達のテントを楽しくしよう。」みたいな事は。

大木:人に向けてっていうよりは、個人的にって感じです。ギアに凝ってくるんですよ。誰かに見せたいっていうよりは、自分が大好きなギアを揃えたくなってくるのはありますね。誰にも伝わらないんだけど、ここがかっこいいんだよなっていうのを、同じものでも買っちゃうっていうのはあります。ランタンとか。

――こだわりのアイテムを揃えて、そこにすごく満足感を得るという事でしょうか。

大木:満足感ありますね。高いのをあえて買っちゃうみたいな。無駄遣いすっごいしてますね(笑)。

――それは無駄遣いだとは思わないです。大木さんは作詞作曲もされるので、何かしらインプットがないとアウトプットも出来ないと思います。恐らく、キャンプであったり、アナログのレコードにハマって浴びる経験をしたなど、そういうものが今後のACIDMANの音楽に還元されて出ていくものだと思います。そこで同じランタンかもしれないですが、「こっちの方がギアとしてかっこいい、絶対にすごい満足するんだ。」という理由で揃えるのは、本当に無駄なことではないと感じました。逆に突き詰められるのがかっこいいと思います。中途半端になってしまう人の方が多いと思います。振り切れてそこまでできるというのは、才能の一つだと思います。

大木:凝り性なんで(笑)。

――いったん「創」の話から外れさせてください。
当メディアで最初にインタビューさせて頂く方に毎回聞いていることがあります。今日の時点で大木さんを構成する要素は様々あると思いますが、その中で一番この要素が重要だなという要素を3つ教えてください。

大木:今日ってことですか。大木伸夫の今までってことですか。

――今日現在です。これが無いと最近のモードが崩れてしまう。みたいなものです。

大木:水、太陽とかじゃないですもんね。そういうことじゃないですもんね。

――そういうことです。

大木:そういうことですか(笑)。食べ物。睡眠。水。とかじゃないですよね(笑)。

――それはそれで一つの答えだと思います。

大木:当たり前じゃんって思われちゃう。

――例えば、衣・食・住だとしても、そこにすごくこだわりがあるかないかの話だと思います。そこにこだわりがあれば一つの要素になると思います。

大木:食は、僕は大事にしてますね、まずは。食べるものって、究極は光なんですよね。光を食べてるんですよ僕ら。要は、野菜だったら光で光合成した植物を食べているし。その植物のエネルギー、太陽から得たエネルギー、水もそうだけど、養分も他もそうだけど。それを動物が食べて、僕らはその動物をいただいているということで。結局、光が形を変えたものをエネルギーとして体に吸収しているので。それは絶対に美味しいと思えるものではないといけないし、ただただ腹を満たせばいいわけじゃなくて、エネルギーを注入すればいいだけじゃないと僕は絶対思っていて。それも儀式なような感じがしていて。いただくものはちゃんといただいて、命をいただくっていうので、だから絶対すごくこだわりますね、食べるものは。
真面目な話だと、宇宙の話とか。いわゆる星空が綺麗だねっていう宇宙の方ではなくて、この世界はなんでできてどうやって始まってどうやって終わっていくんだっていうことが、今までのエネルギーの活力だったりするので。あと自分はいつ死ぬんだろうとか毎晩思いますし。毎晩震えて眠れなくなります。それが自分の活力だからそれかな。が、二つ。
あと、お金?(笑)。資本主義ってよくないってずっと思っていながらも完全にまみれている自分がいて。ディスになるからあんまり言いたくないけど、例えばCMって、全てお金を得るための行動じゃないですか。だから、たまに吐き気がする時もあって。だけど自分はどっぷり依存していて。人間ってなんでこんなにお金のことを考えなきゃいけないんだろうって。お金がないことで、下手したら自殺してしまう人までいるっていう。ただの概念であり、ただの共通認識であるものに生命というものまで脅かされるこのお金という価値観ってとんでもないなっていうのはいつも悩んでますね(笑)。いくら手に入れたら満足するんだろう。誰も満足しないんでしょうねっていうのをわかっていて。でもずっと不安でいる。お金って不思議だなって。

――日常に密着しすぎているので、みんなそこまで深くは考えていないのだと思います。お金に関しては今仰った通りだなと思います。

大木:(事務所を)経営をしだすようになってからかもしれないですけど。すごいお金のことは考えるようになりましたね。昔はお金のことを考えるとすごくナンセンスだし、嫌いだったんだけど、今はそっちの方がナンセンスだと思っていて。お金って大事だし、やっぱり大好きだし。お金のために働くことはできないけど、一生懸命働いてお金持ちにはなりたいんですよ。お金のために働くことっていうのは、僕の中のアイデンティティにはなくて、結果だと思うんですよね、お金は。ついてくるものだから。そういうふうに考えていくことって大事なことだなって42歳になって初めて思えるようになってきましたね。大人になりました(笑)。昔は金なんていらないとか。世界は金じゃないって言ってたんで。

――最初の二つ、食で光を取り込むであったり、死生観的な部分であったりは、今伺って、やっぱり大木さんの世界観というか、軸がブレていないんだなっていうのをすごく感じました。
話が変わります。ライブで何かを演奏して、表現をして、来てくれたお客さんたちに見せるのと、レコーディングで一個の芸術作品をつくり上げることの二択でいうとどちらの方が好きでしょうか。

大木:めちゃくちゃ悩みますね。僕だけの発想、僕だけの脳で言ったらレコーディングの方がダントツ好きです。つくり込んで自分の頭の中のものが形になっていく様っていうのが大好きですね。ただ全然満足できなくて。それを伝えるためにつくっているにも関わらずライブができないってなっちゃうと、ライブができるからこそ今の満足度があると思うんですよ。ライブはライブでトレーニングしなきゃいけないし、歌ってる最中はすっごくしんどかったりするし、楽なことではないので、プレッシャーだったり、歌詞を覚えるだったり、ミスったらどうしようだったり、とにかくテスト前みたいな気分なんですよ、ずーっと。でも終わった後の感動でいったらダントツにライブ。難しいんです本当に。それはお客さんからいただくんでしょうね。エネルギーをきっと。じゃなかったらライブなんかできないと思うんです。人の上に立ってみんなを先導するっていうことはできない人なんで。みんなで一緒に行きましょうっていうのが好きだから。ファンの方からエネルギーをいただいて、よっしゃーって、またいただいてっていうのが終わって、それぞれちょっと前いた時よりはモチベーション高くなれてるっていうのがすごく幸せなことだなって思えるので。何にも変えられない。あと、曲を作っている時の感動もどっちも好きですね。

――ベクトルが違うので、比べようがないという事ですね。

大木:比べようがない。最高なことを味わうってことは、最高の苦しみを味わわないと多分ダメだなと思います。プラマイゼロだと思うんです。

――その苦しみがあってこそ、辿り着いた時の感動があるということですね。
大木さんはギターボーカルですが、ACIDMANは3ピースなので、ギターは全て大木さんがまかなっていると思います。ボーカリストであり、ギタリストでもあるという視点から、ギターにこだわりはありますか。

大木:今は、これだって決めたのを2本使っています。

――イメージでは、リッケンバッカーかフェンダーですが。

大木:テレキャスターですね。
その2本だけですね、ずっと。これからもそうなんでしょうね。こだわるんだけど一回決めたらずっとそれでいく性格なんですよ(笑)。車もそうで。好きな人は買い換えたりするじゃないですか、。僕はそうじゃなくて。ずーっと悩んで。どれがいいか悩んでこれだって決めたら、ずっとそれに乗るっていうタイプです。家もそう。引っ越しを繰り返してじゃなくて、ギリギリまで妥協しないで悩んで決める。でも決めたらずっとそこに住んでるっていう。ずっとそうですね。

――今日お伺いしたお話は全部本当に大木さんのこだわりの強さが出ていると感じます。

大木:同じですもんだって。一辺倒です。

――2本に落ち着いたという、テレキャスターとリッケンバッカーですが、キャラクターが全然違うと思います。そのキャラクターの違いもあり、その2本を選ばれてるのでしょうか。

大木:テレキャスターに関してはそうですね。リッケンバッカーに関しては、散々こだわるって言っときながら、最初はそんなにこだわってなかった。リッケンバッカーに関しては見た目が良くて。ちょっと見た目で買ってみようっていった時に、実はそこまで魅力を感じれていなかったんだけど、手に入れた瞬間から魅力を感じていったんですね。今までそれ以外に何本もギターを試したけど、一番素晴らしいと思えるようになって。もしかしたらそこからこだわりが始まってるかもしれない。リッケンバッカーは、例えるならアナログレコード。でもテレキャスターだったらデジタルなんですよ。その表現の仕方、直情的になるべく早めにお客さんに音を届けたい時はテレキャスターで。でも空気感として、アンビエンスを伝えたい時は、リッケンバッカーって感じで使い分けてます。全然性格が違うものにしてますね。

――今仰った感覚で「この曲はこっち」「この曲はこっち」と選択していらっしゃるという事ですね。例えば、他の楽器を弾こうとか、こういう楽器を練習しようとか、そういう事は考えないのでしょうか。

大木:お遊び程度ですけどね。ピアノは前作のアルバム「Λ」で弾いてたりするんですけど。でも全然、もっと弾けるようになろうとは思っていないですね。やっぱり熱は冷めちゃう。ベースも弾けるしドラムも叩けるけど、ある程度一人前にできたら、それ以上にやりたいとは思わない。飽きちゃうんです。歌とギターは、飽きなかったんですよね、多分ね。

――レコーディングの時は、アレンジも大木さん主導で作っているのでしょうか。

大木:ほぼ僕が主導してますね。

――スタジオセッションで合わせて、そこで指示を出す感じですか。

大木:っていうのもありますね。基本的には指定して。こういう曲はここでやってくれとか。もちろんアイデアをもらったりすることもあります。

――ベースラインやドラムもデモを作りますか。

大木:デモはベースはつくらないです。ギターとドラムとかメロディのデモはつくって。ベースはある程度任せているんだけど、ちょっとイメージと違うのがあったら、ここはそうじゃないんだよね、こうしてとか。いろいろ変えていく感じですかね。

――バンドマスターのように各楽器に指示を出して、話し合いながら作り込んでいくという感じですか。

大木:シンプルな形だと思いますね。

――レコーディングでは、ギターはオーバー・ダブなど沢山するかと思います。その際のアレンジは、どのぐらい考えるのでしょうか。

大木:ものによりますね。5年間ぐらいかける曲もありますから(笑)。曲はできているのに全然形にならなくて。でも、数日ですぐレコーディングして急にバーってやっちゃう曲もあるし。マチマチですね。

――それは、楽曲の持つ力に引っ張られるみたいな事なのでしょうか。

大木:タイミングもあると思うんですけど、結局は人間のメンタルだと思うので。自分が自信あるものだったら重ねる必要もないし、アレンジも必要ないし、メロディとギター1本でいいんですけど。不安だから歪ませるし、不安だからドラム入れるし、ベース入れるし、支えてもらうし、なんでしょうね、きっとね。

――頑なに3ピースでやられているところにもすごくこだわりを感じます。それ以上削げないと感じています。3ピースって本当最小限のミニマムな形だと思います。17年間それでやってきているのがかっこいいですし、そこにこだわりを感じます。

大木:こだわりでしょうね。

――今後もスタンスとしては変わらないですか。

大木:そうですね。でも、絶対3ピースを守るんだっていう発想はないんですよね。ただ、それ以外にあんまり必要としていない。例えば、ピアノだったり、ピアニストだったり、リードギタリストがいたら、曲の幅は広がるとは思うんですけど、数曲でいいんですよね。そうするとアルバムのうち2曲ぐらいピアノが欲しい時に、もしメンバーに入れて4人だとしたら、残りの10曲ぐらいはライブ中にその子をずっと立たせてるってことになるんですよ(笑)。それも無理だなって。

――そのためだけには呼べないという事ですね。

大木:リードギターもたまにこうなった方いいな、広がるなっていうのは、僕がリードギターで重ねればいいし。どうしても二人じゃなきゃできないっていうのも2曲ぐらいしかないんで。残りの十何曲は側で立ってもらうしかない(笑)。じっとしてもらうしかないのは申し訳ないなっていう意味でたまたま3人になってるだけですよね。

――結果的に十分で、それがベストだと思っているからこそ、これでいいという感覚なんでしょうか。

大木:そうですね、結果です。

――大木さんの世界観は宇宙であったり、命であったり、詩の世界が壮大だと思います。毎回詩を書く時にはテーマをまず決めて書いていくのでしょうか。それともこういうこと書きたいというのが降りてくるイメージですか。

大木:僕はテーマは1個しかない。ずっとそのテーマに向けて旅してる人間なので。なぜ人は生まれ、なぜこの世界に生まれ、そしてどこへ行って、何なんだこの世界はっていうのがテーマなので。嘆きだったり、そこには喜びもあり。あとはメロディから先につくるんで、曲をつくった後に、このテーマの中でどんな言葉がこの曲に合うだろうっていうのを探していく感じのつくり方ですね。

――楽曲の雰囲気やメロディラインも関係すると思うのですが、雰囲気に対してどういったワードが合うかというところから考えていくことが多いのでしょうか。楽曲は、コード進行とメロディを同時進行で作ったりするのですか。

大木:同時が多いですね。感覚で歌いながら。たまに偶然変なコードが急に変なメロディを生み出したりすることもあるので。なるべく決めないでやりますね。

――そんな作業の中、ふとした瞬間に、良いメロディやコード進行が浮かぶ瞬間があるという事ですね。

大木:ボイスメモですね。

――それをメモして、そこから楽曲を広げていくこともあるという事ですね。リハーサルスタジオでのバンドセッションでジャムりながら曲を作る事を試した事はありますか。

大木:インストゥルメンタルではそういうのありますね。30分ぐらいジャムって全部録っておいて。そういえばあそこのフレーズ良かったねみたいなのはあるんですけど。歌がある曲でジャムりながらつくれたっていうのは、あんまりないかな。でも指示してっていうのはありますね。ジャムってて、でもちょっと歌のメロディがやりたいなと思った時に、ちょっとごめん止めてくれ、って。で、佐藤くんにコードを教えて、4つ打ちにしてくれとか、ミドルにしてくれ、じゃあ、行くよ、バーンって歌ってつくるっていうのはあると思いますね。

――そういう時は何かが降りてきてる感覚なのでしょうか。

大木:欲望があるんでしょうね。フツフツと叫びたくなるみたいな(笑)。

――基本的には一人で自身の世界と対峙して、生み出していくというのが基本的なスタンスなのでしょうか。

大木:そうですね。

――結成してからですと、22年目というところで、メンバーも変わらずずっとやってきています。メンバーとは家族みたいな関係性でしょうか。

大木:いや、もうなんだろう。家族ではないな。家族となるには、あまりにもストイックな現場なので。ファンの方をがっかりさせるようなことを言うかもしれないけど、メンバーには、いただいたものにはありがとうって言うんだよっていうことまで教えてます(笑)。こういうメールをいただいたら、最後自分で返すんだよ、とかってまで教えてる感じです。大変です本当。ベース、ドラムだけじゃないとこまでちゃんとケアしているので。

――大変そうです。

大木:どうなんだろう(笑)。

――他のお二人からは、大木さんに対する信頼であったりリスペクトが凄くあると思います。そうじゃないと22年は続かないと思いますので。

大木:彼らが一番すごいところっていうのは、僕に何も文句を言わずについてきたっていうことだと思うし、僕も、3人でここまでやれたのは彼らが何も文句を言わないでついてきてくれたからだと思うから。

――信頼してくれたからこそやれてるという事ですね。

大木:それが一番のこのバンドの強みだと思いますね。

――そこの強みは確かに感じます。
改めて「創」のLP盤の話に戻らせてもらいます。当時「創」を聴いた時に、1曲目の「8to1 completed」という曲を聴いた時に衝撃を受けました。音の入り方など含めて。当時、2002年に出た時にそんなに複雑なことをやっているバンドは全然いなかったと記憶しています。

大木:いなかったですね。わかりやすいものはあったんですけどね。

――グランジやパワーポップから影響を受けたストレートなロックをやってるバンドが多い中、この1曲目から始まり、2曲目以降もとても哲学的なことを歌うバンドというのは全然いなかったと思います。それもあり、凄く衝撃を受けたというのが印象に残っています。最近改めて「創」を聴かせて頂いて、「かっこいいな」と単純に一リスナーとして思いました。大木さん的にも振り返って聴くと、「かっこいい」というところに落ち着くんですよね。

大木:思いましたね。自分がやってるとは思えないぐらいに客観的に、いいバンドだなっていうのを思ったし。すごく考えた記憶はあります。狙ったわけではないけれど。イントロに関してもどの拍でどこから入った方が驚くかなとか。いい意味でひねくれてるんでしょうね。そういや、こういうバンド誰もいないなとかっていうのもあったし。たまたまそれが受け入れられたから今までやれているので。タイミングもちょうど良かったんだと思いますね。ちょっとでもズレたら世に出れなかったんだと思うんです、僕らみたいな難しいバンドっていうのは。1stアルバムを聴くとそのエネルギーに満ちてますね。

――それは本当に思いました。あとは本当にポップだと思います。とても複雑なことをやっていて、そんな難しいことを歌っているバンドなのに、すごくポップさがあってそこが強みだと思います。それがあるから今があるのではないかなと感じます。楽曲自体が、どこかポップさをずっと内包して鳴ってくれるというところで、グッと琴線に触れてくる感覚があります。
本日の最初に、全然関係ないバンドで今出て来たら、「いいバンドだから、今これを出してきたらプロデュースしたい」とお話をされていましたが、その感覚がとても分かります。

大木:売れるって周りに言いますよね。いいバンドがいるんだよって。

――今度プロデュースするんだと。

大木:下手なんだけどね。ただただ下手なんだけど、そこがまたいいんだよみたいな。

――そこを含めてかっこいいと言いたい感覚ですね。

大木:そうですね。

――最後にさせて頂きます。10月30日に数量限定ではありますがアナログ盤で「創」が出ます。これを手にしてくださるリスナーの方たちに対して、どういう体験をしてもらいたいかをお伺いしてよろしいでしょうか。

大木:これが初めてっていう人はいないと思うんですよ。昔にCDを聴いてくれたりとか、僕たちのファンでいてくれた方が手に取るものなので。その時代のことを思い出すでもいいし、自分の歴史に重ねてでもいいし。とにかくデカイので、デカさを味わっていただいて。音の美しさもできればこだわって聴けたら素晴らしいと思うし。17年メジャーで続けられたからこそできることなので、それは手に取ってくれている一人一人のおかげなので、返礼品だと思ってください(笑)。ふるさと納税の返礼品で私がACIDMAN支えてるんだみたいな想いで胸を張って聴いてくれたら嬉しいですね。

――それでは本日は以上で終わりにさせて頂きます。長い時間ありがとうございました。

大木:ありがとうございました。

photo by 尾方里菜

Kohei Murata

Kohei Murata編集長・ライター

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バンド活動を通して、自分の音楽を世界に発信する事を志しながら、同時に仕事での独立を目指して様々な業種を経験する。バンドでは日本のみならず台湾でも活動を行い、台湾でのアルバム2枚のリリースや大型野外フェスティバルへの出演も果たす。
その後、様々な仕事を経験し2015年独立。
現在は音楽メディアOptimanotesの編集長兼ライターとして、記事の執筆をしている。

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